年毎としごと)” の例文
此のけむりほこりとで、新しい東京は年毎としごとすゝけて行く。そして人もにごる。つい眼前めのまへにも湯屋ゆや煤突えんとつがノロ/\と黄色い煙を噴出してゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
人知らぬ思ひに心をやぶりて、あはれ一山風ひとやまかぜに跡もなき東岱とうたい前後ぜんごの烟と立ち昇るうらわか眉目好みめよ處女子むすめは、年毎としごとに幾何ありとするや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ラーポとビンドいかにフィオレンツァに多しとも、年毎としごとにこゝかしこにて教壇より叫ばるゝかゝる浮説の多きにはかず 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
延喜式えんぎしきに山城国葛城郡かつらきごほり氷室ひむろ五ヶ所をいだせり、六月朔日氷室より氷をいだして朝庭てうてい貢献こうけんするを、諸臣しよしんにも頒賜わかちたまふ年毎としごとれいなるよしなり。
薄明りの中にほのめいた、小さい黄色の麦藁帽、——しかしその記憶さえも、年毎としごとに色彩は薄れるらしい。
トロッコ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十一ぐわつの二十八にち旦那だんなさまお誕生日たんぜうびなりければ、年毎としごと友達ともだち方々かた/″\まねまいらせて、周旋しうせんはそんじよしやうつくしきをりぬき、珍味ちんみ佳肴かこううちとけの大愉快おほゆくわいつくさせたまへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
現に仏蘭西フランスの富は年毎としごとに増してくし、学問芸術に就いてはロダンの彫刻、マスネエの音楽、ポアンカレエの科学、ルノワアル、モネ、セザンヌ、ゴツホ、ゴオガン、マチス等の絵画
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
向象賢の死後日本との交通はすこぶる頻繁となり、王子や貴族の年毎としごとに薩摩や江戸に出かけるのが多くなり、支那との往来も昔のように続けられて、親方おやかた官生かんしょうの支那に行くのも少くはなかった。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
年毎としごとに彼の家の窓は次ぎ次ぎと閉ざされて行って、とうとうしまいには開いているのはたった二つきりになってしまい、その一つには、読者もすでに御存知のとおり、紙が貼りつけてある始末だ。
かくしつつ、年毎としごと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
延喜式えんぎしきに山城国葛城郡かつらきごほり氷室ひむろ五ヶ所をいだせり、六月朔日氷室より氷をいだして朝庭てうてい貢献こうけんするを、諸臣しよしんにも頒賜わかちたまふ年毎としごとれいなるよしなり。
わが越後のごとく年毎としごと幾丈いくぢやうの雪をなんたのしき事かあらん。雪のためちからつくざいつひやし千しんする事、しもところておもひはかるべし。
或村あるむらに(不祥の事ゆゑつまびらかにいはず)夫婦ふうふして母一人をやしなひ、五ツと三ツになる男女の子をもちたる農人のうにんありけり。年毎としごとさけの時にいたればそのれふをなして生業いとなみたすけとせり。