平静へいせい)” の例文
旧字:平靜
「そうだが、このさきはわからないが、とにかくいまのところでは天下平静へいせい御岳みたけ兵学大講会へいがくだいこうえも、今年はさだめしにぎわしかろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分じぶん不安ふあん焦燥しょうそう無念むねん痛心つうしん……いまでこそすっかり精神こころ平静へいせいもどし、べつにくやしいとも、かなしいともおもわなくなりましたが
晩方ばんがたにかけて、ひとしきり、かぜなみたかかったが、それもしだいにしずまって、うみは、もとの平静へいせいにかえりました。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
下宿の老婦人は、アンを見ると、驚愕きょうがくに近い表情になって、彼女のところへ飛んできたが、傍に仏が立っているのに気がつくと、にわか平静へいせいに戻ろうと努力し
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして当時平静へいせいに仕事をしていたけれども、その裏面にはいきどおりをふくんでいたことが言いたかったのだ。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
と、平静へいせい顔色かおいろもどつてこたえた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
しかしながら、こうした子供こどもからだにも、またすこしのあいだは、平静へいせいなときがありました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたしてこころ平静へいせいたもてるであろうか、はたしてむかしの、あのみぐるしい愚痴ぐちやら未練みれんやらがこうべもたげぬであろうか……かんがえてても自分じぶんながらあぶなッかしくかんじられてならないのでした。
近国きんごくへうわさがもれては外聞がいぶんにかかわるというので、昨夜ゆうべのさわぎはいっさい秘密ひみつにするよう、家中かちゅうとうもうわたしがあって、ほどなく、躑躅つつじさきたい、つねの平静へいせいに返っていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分じぶんは、もうなんにも刺戟しげきほっしない。またたいした欲望よくぼうもない。ただ、平静へいせいにじっとしていたい。この電燈でんとうが、自分じぶんであったら、自分じぶんは、どんなに幸福こうふくであろう……とおもったのでした。