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宴會
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えんくわい
今宵、
家例に
因り、
宴會を
催しまして、
日頃別懇の
方々を
多勢客人に
招きましたが、
貴下が
其組に
加はらせらるゝは一
段と
吾家の
面目にござる。
尤も
彼の
前にも
車が
續いた。
爾時、
橋の
上をひら/\
肩裾の
薄く
濃く、
月下に
入亂れて
對岸へ
渡つた四五
人の
影も
見えた。
其等は
徒歩で、
些と
早めに
宴會を
辭した
連中。
夫人 どうぞいの、あのやうなお
方を
可愛しいと
思はぬか?
今宵の
宴會には
彼方も
見ゆる
筈、パリス
殿の
顏といふ
一卷の
書を
善う
讀んで、
美の
筆で
物してある
懷しい
意味をば
味はや。
宴會と
云ふが、
優しい
心ざしの
人たちが、なき
母親の
追善を
營んだ、
其の
席に
列なつて、
式も
盞も
濟んだ、
夏の
夜の十
時過ぎを、
袖崎と
言ふ、………
今年東京の
何某大學の
國文科を
卒業して