外面とのも)” の例文
検疫所が近づいたのだなと思って、えりもとをかき合わせながら、静かにソファの上にひざを立てて、眼窓めまどから外面とのもをのぞいて見た。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
媼は痩せたるひぢさし伸べて、洞門をおほへる蔦蘿つたかづらとばりの如くなるを推し開くに、外面とのもは暗夜なりき。濕りたる濃き霧は四方の山岳をめぐれり。
たゞさへ、おもけない人影ひとかげであるのに、またかげが、ほしのない外面とのもの、雨氣あまけびた、くもにじんで、屋根やねづたひにばうて、此方こなた引包ひきつゝむやうにおもはれる。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そしてドアに手をかけると、グッと手前へ開いた。そこには外面とのも黒手くろてのような暗闇やみばかりが眼にうつった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
口三味線くちさみせん浄瑠璃じやうるりには飛石とびいしづたひにちかづいてくるのを、すぐわたしどもはきヽつけました。五十三つぎ絵双六ゑすごろくをなげだして、障子しやうじ細目ほそめにあけたあねたもとのしたからそつと外面とのもをみました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
外面とのもは尚も雪のひそやかに降りしきる気配、あとは寂として、万物声なし。
滝野川貧寒 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
先ず第一に表紙の図案が綺麗で目新しく、俳味があってしかも古臭くないものであった。不折ふせつ黙語もくご外面とのも諸画伯の挿画や裏絵がまたそれぞれに顕著な個性のある新鮮な活気のあるものであった。
明治三十二年頃 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ねやの上にかたえさしおほひ外面とのもなる葉広柏はびろがしわあられふるなり (能因のういん
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
かりずみのねむりは浅くさめしかば外面とのもの道にあめりをるかな
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
夏もやや鳥屋とや外面とのもの照りつよし雛鶏がかける突きころぶかに
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
忍術をみせよと爺にせがみたり外面とのもはしきり吹雪するなり
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
端居はしいして垣の外面とのもの世を見居る
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
足惱あなゆみて外面とのもを過ぎつ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
しかし不審なのは、いまは午前二時半を過ぎて、外面とのもは真の闇に包まれている筈なのに、この複雑な覗き眼鏡のような器械でみると、まるで真昼のように明るく見えるのであった。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ねやの上にかたえさしおほひ外面とのもなる葉広柏はびろがしわあられふるなり
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
手拭を肩にかけゆく長廊下外面とのもは霧にこもりしづもる
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
外面とのもなる嗟嘆なげかひよ、波もなきいんくの河に
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
雛納めしつゝ外面とのもは嵐かな
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
にごまど硝子がらす外面とのもよりのろひためらふ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)