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ぬりごめ
ふりがな文庫
“
塗籠
(
ぬりごめ
)” の例文
かの女は、良人にもだれにも
冒
(
おか
)
させない
塗籠
(
ぬりごめ
)
の一室をもち、起きれば、
蒔絵
(
まきえ
)
の
櫛笥
(
くしげ
)
や鏡台をひらき、暮れれば、
湯殿
(
ゆどの
)
ではだをみがく。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小さいが
普請
(
ふしん
)
の良い
塗籠
(
ぬりごめ
)
が一つあり、廊下で
母屋
(
おもや
)
に續いて、その母屋がまた、素晴らしい木口で、どつしりと四方をにらんでゐるのでした。
銭形平次捕物控:247 女御用聞き
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
御病気を聞き伝えて御帳台のまわりを女房が
頻繁
(
ひんぱん
)
に往来することにもなって、源氏は無意識に
塗籠
(
ぬりごめ
)
(屋内の蔵)の中へ押し入れられてしまった。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
母屋
(
もや
)
の
塗籠
(
ぬりごめ
)
のなかまで、邸じゅうを馳けまわって伜どもを探したが、国吉と泰博は下司の知らせで逸早く邸から逃げだし、きわどい瀬戸で助かった。
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
一身の浮き沈みを
放下
(
ほうか
)
して、そのような
眼
(
まなこ
)
であらためて世の様を眺めわたしますと、何かこう暗い
塗籠
(
ぬりごめ
)
から表へ出た時のように
眼
(
まなこ
)
が
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとして
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
▼ もっと見る
その部屋は寝所の東に当り、侍たちの宿直の間とは反対の位置にあったし、あいだは
塗籠
(
ぬりごめ
)
になっているため、むろん往き来はできないようになっていた。
若き日の摂津守
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
厨
(
くりや
)
の夕暮、
塗籠
(
ぬりごめ
)
の二階、
簀
(
す
)
の子のたたずまい、庭の中というように、至る
処
(
ところ
)
に筒井は夫の呼吸を感じ、そのたびに少しきびしい
声音
(
こえ
)
になって筒井は胸の中でいった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
寺の寮々に
塗籠
(
ぬりごめ
)
を置いて、おのおの器物を持ち、美服を好み、財物を貯え、放逸の言語にふける、そうして
問訊
(
もんじん
)
礼拝
(
らいはい
)
等は衰微している。恐らくは
余所
(
よそ
)
もそうであろう。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
玉川
砂礫
(
ざり
)
を敷きたる
径
(
こみち
)
ありて、
出外
(
ではづ
)
るれば子爵家の
構内
(
かまへうち
)
にて、
三棟
(
みむね
)
並べる
塗籠
(
ぬりごめ
)
の
背後
(
うしろ
)
に、
桐
(
きり
)
の木高く
植列
(
うゑつら
)
ねたる
下道
(
したみち
)
の清く掃いたるを
行窮
(
ゆきつむ
)
れば、
板塀繞
(
いたべいめぐ
)
らせる
下屋造
(
げやつくり
)
の煙突より
忙
(
せは
)
しげなる
煙
(
けふり
)
立昇りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
湯島なる
故
(
ふる
)
さとに来て見れば、表なる
塗籠
(
ぬりごめ
)
はいたう揺り崩され、屋根なりし瓦落ちつもり、壁の土と共に山の姿なせり。されば常に駕籠舁き入るゝ玄関めく方へ往かむこと難く、さりとてこゝにあるべきならねば、先づ
案内
(
あない
)
を
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
と伊那丸は立ちあがって、
塗籠
(
ぬりごめ
)
の出口の戸をおしてみると、はたして
開
(
あ
)
かない。力いっぱい、おせど引けど開かなくなっている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
庭先には巨大な
欅
(
けやき
)
が五六本、後ろは栗林を背負つて寺に續き、その間に母屋と小屋が二た棟、外に小さい
塗籠
(
ぬりごめ
)
が一つ、なか/\堂々たる家居です。
銭形平次捕物控:285 隠れん坊
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一身の浮き沈みを
放下
(
ほうか
)
して、そのやうな
眼
(
まなこ
)
であらためて世の様を眺めわたしますと、何かかう暗い
塗籠
(
ぬりごめ
)
から表へ出た時のやうに
眼
(
まなこ
)
が
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとして
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
塗籠
(
ぬりごめ
)
にある品々、とりわけ青年の身のまわりの物はすべて筒井が見ていて、筒井がいなければ一家の器物の一つを尋ねるに、全部の長持や箱、棚の中を捜さなければならなかった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
築地の上に千人、屋の上に千人、(これは物理的自然においては不可能であるが、心理的には可能である、)母屋のうちは女どもに守らせ、かぐや姫は
塗籠
(
ぬりごめ
)
に入れて嫗が抱いている。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
導かれて、ふたたび奥へ入ったが、そこは前の道場よりはまた奥で、
塗籠
(
ぬりごめ
)
といってもよい真四角で一方口の部屋だった。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大一番の
海老錠
(
えびじょう
)
を外して、
塗籠
(
ぬりごめ
)
の扉を開くと、中は二重の板戸、それは手鍵一つで、わけも無く開きます。
黄金を浴びる女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「——ここへは、許しなくば
下僕
(
しもべ
)
の者も参りませぬ。見らるる通り
塗籠
(
ぬりごめ
)
の
一間
(
ひとま
)
、外にお声のもれることもない」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
青蓮院のひろい内殿は、どこかの
筧
(
かけひ
)
の水の音が、寒い夕風を生み、
塗籠
(
ぬりごめ
)
からは、
黄昏
(
たそが
)
れの色が、湧いてくる。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幾重にも、そこばかりを囲んで離れなかった捕手たちは、袋の中のものを抑えるような考えでいたが、やがて、
塗籠
(
ぬりごめ
)
の隙間から異臭のある煙が洩れだしたので
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
橋がかりへ出る口には幕が垂れているし、
角
(
すみ
)
の奉行窓からかすかな明りはさしているが、
塗籠
(
ぬりごめ
)
のように仄暗い。そして一面の鏡だけが冷たい光をたたえている。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彦右衛門が手招きして、
庫裡
(
くり
)
の一室へ連れて行った。
塗籠
(
ぬりごめ
)
の
経蔵
(
きょうぞう
)
である。ゆっくり
寝
(
やす
)
むがよいと
宥
(
いたわ
)
って、男を中へ導くと、彦右衛門は外から
錠
(
じょう
)
を
卸
(
おろ
)
してしまった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まさか妙齢の
処女
(
おとめ
)
が、馬に乗って
質
(
しち
)
入れにも来まいに、一体なんだろうと立ち止まる者を残して、乗りすてた駒を
塗籠
(
ぬりごめ
)
の
柵
(
さく
)
に
繋
(
つな
)
ぎ、美女と侍は
暖簾口
(
のれんぐち
)
から戸のなかに消え込みました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
高い所に、角な切り窓が一つあるほか、明りの入る
坪縁
(
つぼえん
)
もなく
通
(
かよ
)
い廊もなかった。
洞然
(
どうぜん
)
たる幾つかの箱部屋と荒土の
塗籠
(
ぬりごめ
)
である。これではどんな忍びの者も外部から
御座
(
ぎょざ
)
へ近づくことはできまい。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、次の間の
塗籠
(
ぬりごめ
)
へ身支度にかくれてしまった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
塗籠
(
ぬりごめ
)
の外では龍平。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
塗籠
(
ぬりごめ
)
です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
塗
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
籠
常用漢字
中学
部首:⽵
22画
“塗籠”で始まる語句
塗籠籐
塗籠造
塗籠窓