埋伏まいふく)” の例文
つづいて翌日には、花栄、秦明しんめい徐寧じょねい呼延灼こえんしゃくの四人とその部隊が来て、これは渭河の両岸に、埋伏まいふくの計をとって、影をひそめる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて食卓から立って妻児が下りて来た頃は、北天の一隅に埋伏まいふくし居た彼濃い紺靛色インジゴーいろの雲が、倏忽たちまちの中にむら/\とった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「どうも姉様ねえさん難有ありがとう。」車夫は輪軸を検せんとて梶棒を下すを暗号あいずに、おでん燗酒かんざけ茄小豆ゆであずき、大福餅の屋台みせに、先刻さきより埋伏まいふくして待懸けたる、車夫、日雇取ひようとり、立ン坊、七八人
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かえってマルセーユに潜匿せんとくしてより、爾来じらい二十年間は、殆んど暗澹たる小室に蟄居ちっきょし、みずから一の孤囚こしゅうと為り、以て社会の地層の下に埋伏まいふくし、この中よりして千辛万苦、その気脈を四方に通じ
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あとは四、五人、しのびしのびに三方に埋伏まいふくする。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
郝思文かくしぶんもまた、べつな所で、山兵の埋伏まいふくに出会って捕われ、例の、醜郡馬しゅうぐんば宣賛せんさんも、翌朝、湖畔に追いつめられて、いけどられた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯宿々々に埋伏まいふくして、妖鬼ようきごとを圧したが、日金颪に気候の激変、時こそ来たれと万弩まんど一発、驚破すわ! 鎌倉の声とともに、十方から呼吸を合はせ、七転八倒のさわぎに紛れて、妻子珍宝つかみ次第。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこに埋伏まいふくの計があるとも知らず、秦明は騎虎の勢いのまま追っかけて行き、草むらの落し穴へ馬もろとも顛落てんらくした。伏兵がいたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毛野川の東を、伏兵線の一陣とし、ここの欅林を二陣として、源扶、隆たち兄弟の兵は、二段がまえに、埋伏まいふくしていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて蜀軍は続々五路にわかれて引揚げを開始したが、孔明の予察どおり、司馬懿仲達は、蜀兵の埋伏まいふくをおそれて、敢然たる急追には出なかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「われをいましめたもうは、天、われをたすくるのである。怠ってはなるまい。九陣にわかれ、八面に兵を埋伏まいふくし、各〻、英気をふくんで、夜陰を待ちかまえろ」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄蕃にいいふくめて、途中に兵を埋伏まいふくし、夜逃げの秀吉を急襲して、一挙に後のわざわいを絶ち、ここ腹いッぱい溜っているうつを晴らせるものと、夜明け方まで
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「伏勢があれば伏勢を蹴ちらすまでだ、これしきの敵、たとえ十面埋伏まいふくの中を行くとも、なんの恐るるに足るものか。——ただ追い詰め追い詰め討ちくずせ」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかることもあろうかと、かねて隠しておいた弩弓隊どきゅうたいや鉄砲隊の埋伏まいふくの計が、果然、図にあたったのである。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてここで埋伏まいふくの味方、苗木久兵衛父子の兵と合し、奈良井ならい附近ですこしばかり敵の抵抗もあったが、小合戦で終り、敵の遺棄いき死体四十余名を葬ったに過ぎなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉には今、孔明があり、周瑜しゅうゆもかくれなき名将。ことに大江をへだてて、彼の内情を知る便りもありません。ひとつお味方のうちから人を選んで、呉軍の中へ、埋伏まいふくの毒を
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、兵を分けて、要地要地に埋伏まいふくさせ、やがて郎党数騎をつれて、国庁の本営へ帰って来た。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に、南北の山すそに埋伏まいふくしておいた城兵も、鵬翼ほうよくを作って、寄手を大きく抱えてきた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、わが対策としては、げきをとばして、曹真の手勢に一刻も早く郿城びじょうのまもりを固めさせ、一面箕谷の路には奇兵を埋伏まいふくして、彼がこれへ伸びてくるのを破砕し去ることが肝要だ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、関ヶ原以北の嶮隘けんあいな地形は、埋伏まいふくして待つものにとっては甚だ都合がいい。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつのまにか、ここの埋伏まいふくの陣は、逆に、敵の巧みな網のうちになっていたのである。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次いで、関興、張苞のふたりへ、おのおの一軍を与えて、祁山きざん嶮岨けんそへさし向け、後また、馬岱ばたい王平おうへい張嶷ちょうぎの三名には、べつに一計をさずけて、これは本陣付近に埋伏まいふくさせておいた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なおまだ暁天も暗いうちに、彼は、敵領に近い大宝郷だいほうごう堀越の渡し附近に埋伏まいふくした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、中軍両翼が正攻法をとって前進する三日も前に、すでに張嶷ちょうぎ、張翼のふたりに間道潜行隊をさずけ、これを遠く敵塞てきさいの後方に迂回うかいさせ、その道路に埋伏まいふくさせておいたものだという。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孫乾そんけん西河さいかの岸に舟をそろえて避難民を渡してやるがよい。糜竺はその百姓たちを導いて、樊城へ入れしめよ。また関羽は千余騎をひきいて、白河はくが上流に埋伏まいふくして、土嚢どのうを築いて、流れを
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三日あれば、川中島衆も、ことごとく徳川勢のうしろまで、ばいをふくんで、つめ寄りましょう。われらも、それぞれ身を変じ、奇兵をひっさげて、彼方此方の要路にひそみ、充分、埋伏まいふくけい
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万一、旗をかくして、埋伏まいふくけいもやあると、入念に見ましたが、守将高山右近長房以下ことごとく、一刻半ほど前に、田上山(羽柴秀長の陣地)のふもと辺りまで、遠く退却いたしたようにござりまする
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おおむね、埋伏まいふく、視野、遁走とんそうに都合のよい山岳をうしろにしている。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陣中の柵内には、旗ばかり立てて、兵はみなほかに埋伏まいふくしていた。そして夜も二更の頃になると果たして、一団の軍勢が、手に手に炬火たいまつをもち、喊声かんせいをあげ、近づくやいな陣屋陣屋などへ火をかけた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
程昱は、この時、十めん埋伏まいふくの計をすすめたといわれている。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はここの埋伏まいふくの陣を見るなり、こう叫んだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
めん埋伏まいふく
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)