吸口すひくち)” の例文
藍微塵あゐみぢんあはせを、膝が破れさうに坐つて、此時代では何よりの贅澤とされた銀の吸口すひくちのチヨツピリ付いた煙管で煙草盆を引寄せる平次は、若くて好い男ながら
代助は烟草たばこけて、吸口すひくちくわへた儘、椅子のあたまたせて、くつろいだ様に
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
じぶと料理れうりあり。だししたぢに、慈姑くわゐ生麩なまぶ松露しようろなど取合とりあはせ、魚鳥ぎよてうをうどんのにまぶして煮込にこみ、山葵わさび吸口すひくちにしたるもの。近頃ちかごろ頻々ひんぴんとして金澤かなざは旅行りよかうする人々ひと/″\みなその調味てうみしやうす。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ゆつくりとしかひまなくうごかしては時々とき/″\すき煙草たばこうてすこくちいたまゝ煙管きせる吸口すひくちをこけたほゝあてふかかんがへにでもなやんだやうたゞ凝然ぢつとしてる。けぶりくちからすこしづゝれてはなつたひてあがる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
親爺おやぢきざ烟草たばこかすので、のある長い烟草盆を前へ引き付けて、時々とき/″\灰吹はいふきをぽん/\とたゝく。それが静かなにはへ響いておとがする。代助の方はきん吸口すひくちを四五本手烙てあぶりなかならべた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)