勃々ぼつぼつ)” の例文
そこで無為軍に美邸をかまえ、ずいぶん贅沢ぜいたくな生活ぶりをやっているが、どうして、なおまだ内には野心勃々ぼつぼつたるものがあるらしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小野君は勇気勃々ぼつぼつたる青年であって欧米の新智識を有し、我輩の如きも学問の上に於て君の教えを受けたこともすくなくなかった。
東洋学人を懐う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
或る日、ナポレオンはその勃々ぼつぼつたる傲慢ごうまんな虚栄のままに、いよいよ国民にとって最も苦痛なロシア遠征を決議せんとして諸将を宮殿に集合した。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
が、一夜のうちに毛利一家の興廃を賭けたわけであるが、併し元就の心中には勝利に対する信念の勃々ぼつぼつたるものがあったのではないかと思われる。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いわんや草莽そうもうの中に蟄伏ちっぷくし、超世ちょうせいの奇才をいだき、雄気勃々ぼつぼつとして禁ずる能わざるものにおいてをや。いわゆる智略人に絶つ、独り身なきをうれう。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
血気勃々ぼつぼつたる大助は、かくと聞くより扼腕やくわんして突立つったつ時、擦違う者あり、横合よりはたと少年に抵触つきあたる。啊呀あなやという間にげて一間ばかり隔りぬ。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少壮にして彼は社会の改善に心を労し、一度は仏国革命に投じて理想の実現を計りし英気勃々ぼつぼつたる青年であった。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ようとしてその便りが無いのは、心配といえば心配だが、あの先生のことだから、途中、何か遊意勃々ぼつぼつとして湧くものがあって道をかえたのか、そうでなければ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
新年早々屠牛を見に行くとは、随分物数寄ものずきな話だとは思ったが、しかし私の遊意は勃々ぼつぼつとしておさえ難いものがあった。朝早く私は上田をさして小諸の住居すまいを出た。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
衣水子、木川子など、いずれも勇気勃々ぼつぼつ、雨が降ろうが火が降ろうが、そんな事には委細頓着とんちゃくない。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
ある稀有けうの堅忍不抜な、野心勃々ぼつぼつたる勤勉が加わって、その勤勉が彼の趣味の潔癖な感じ易さと闘いながら、烈しい懊悩のうちに、異常な作品を生み出したからである。
もう一つは、そうすることによって此娘からお七的な激情を呼び覚まし、それを鑿の芸術に活かしてやろうといった、逞ましい野心が、勃々ぼつぼつとしてその功名心を煽ったのです。
六月の末、江戸に来たるにおよんで夷人の情態を見聞し、七月九日獄に来たり、天下の形勢を考察し、神国の事、なほなすべきものあるを悟り、はじめて生を幸とするの念勃々ぼつぼつたり。
留魂録 (新字旧仮名) / 吉田松陰(著)
わたくしの邪心は、勃々ぼつぼつとしておさえがたく、ついにまたしても、新来の男女が、ぴったりとより添っているあたりを目がけて、どすんと突き当った。その効果は、どうであったか。
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
英気勃々ぼつぼつとしてわれながら禁ずることが出来ない,どこへどうこの気力を試そうか、どうして勇気を漏らそうかと、腕をさすッて、放歌する、高吟する、眼中に恐ろしいものもない
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
そこで九郎兵衛に返書をもたらさしめ、守屋守柏しゅはく小関おぜき大学の二人を京へ遣ったが、政宗の此頃は去年大勝を得てから雄心勃々ぼつぼつで、秀吉東下の事さえ無ければ、無論常陸に佐竹を屠って
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
英気勃々ぼつぼつとして我こそ姫君の選に預からんと心ひそかに期する所あるは独身者の若紳士なり。中川兄妹は主人方の手伝い役、小山夫婦は来客の間を周旋しゅうせんし、大原満は快然かいぜんとして得意の色あり。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
曹賊の経歴を見れば、朝廷にあっては常に野心勃々ぼつぼつ。諸州に対しては始終、制覇統一の目標に向って、夜叉羅刹やしゃらせつの如き暴威をふるっている。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、ナポレオンの田虫は西班牙スペインとはちがっていた。彼の爪が勃々ぼつぼつたる雄図をもって、彼の腹を引っ掻き廻せば廻すほど、田虫はますます横に分裂した。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
然るに諸君が今日大いに活動を始め、党勢拡張もしくは種々の規則の改正、また先刻の討論を聴いても甚だ鋭気勃々ぼつぼつたる有様を見て、私は喜びに堪えぬのである。
〔憲政本党〕総理退任の辞 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
六月の末江戸に来るに及んで、人の情態を見聞し、七月九日獄に来り天下の形勢を考察し、神国の事なおなすべきものあるを悟り、初めて生を幸とするの念勃々ぼつぼつたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
仮令たとえこの兄の得意の時代はまだ廻って来ないまでも勃々ぼつぼつとした雄心はおさえきれないという風で、快く留守中のことを引受けたばかりでなく、外国の旅にはひどく賛成の意を表してくれた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吾輩の今回の旅行はこれで終ったが、横断隊は勇気勃々ぼつぼつとして突貫旅行を続けている。髯将軍と衣水子の快筆は、未醒子の漫画、木川子の写真と共に、必ず痛快に本誌の次号を飾るであろう。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
きたれる二個ふたり眷属けんぞくは三界無宿の非人にて、魔道に籍ある屠犬児いぬころし鳩槃荼くはんだ毗舎闍びしゃじゃを引従え、五尺に足らざる婦人おんなながら、殺気勃々ぼつぼつ天をきて、右の悪鬼にふすまを開けさせ、左の夜叉やしゃしょくを持たせ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
野心勃々ぼつぼつたるハリ・ドレゴは、まだあきらめかねて水戸に相談をかけた。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
さらぬだに若い孫権、そう励まされなくても、鬱心うっしん勃々ぼつぼつであった孫権。忽ち、その気になって、軍議を会そうとした。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
理性力で此処まで漕ぎ付けたが、しかし勃々ぼつぼつたる人間の欲情は致方いたしかたなく、内密でなお外に蓄妾する。なかなか理想通りにはいかぬが、表面だけでも粛清されたのは結構である。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
彼は勃々ぼつぼつとした心をおさえかねるという風に見えた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
伊勢守が、この小柳生城へ訪ねて来たのは、石舟斎がまだ兵馬の野心勃々ぼつぼつとしていた三十七、八歳のころだった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは諸君の力につこと大なりと思う。英気勃々ぼつぼつたる諸君の顔色に触れてみると、そういう勇気を持って居るのに相違ないとかたく信ずる。今日は諸君が勉強をするところの始めの日である。
始業式に臨みて (新字新仮名) / 大隈重信(著)
程昱は、野心勃々ぼつぼつたる彼が腹心のひとりである。しきりに天下の事を論じたあげく
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年といえば、まだ男ざかりの四十台で覇心はしんいよいよ勃々ぼつぼつたるものがある。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この乱麻らんまの世の中にあって、いつのまにか、幕府権力にも屈しない「士道」を生み、それを磨き合っている風が勃々ぼつぼつとして、ここに在る、石母田外記一人を見ても、分る気もちがするのであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勃々ぼつぼつと、志は燃えるが」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)