初孫ういまご)” の例文
女房のお藤もやはり不同意で、たとい隠居するにしても、娘に相当の婿をとって初孫ういまごの顔でも見た上でなければならないと主張した。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あやめたところで、大したおとがめはあるめえ——お富に初孫ういまごが出来る頃までには、手前も西国巡礼の旅から帰って来られるだろうよ
森「何時いつでも御隠居さんが、文治に女房にょうぼを持たせて初孫ういまごの顔を見てえなんて云うが、あんたは御新造をお持ちなせえな」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
在学中にもかかわらず結婚すると言い出しても、母親は反対しないのみか、むしろ、一日も早く初孫ういまごの顔が見たさに、喜んで同意し、話が迅速に運ばれて
血の盃 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
早く相応な者をあてがって初孫ういまごの顔を見たいとおもうは親の私としてもこうなれど、其地そっちへ往ッて一軒の家をなすようになれば家の大黒柱とて無くてかなわぬは妻
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……いつまでもじゃじゃばっていられずと、はやくお役御免を願って、初孫ういまごの顔を見る算段さんだんでもなさい
それでもお祖母様は、どんなにか初孫ういまごの顔を御覧になりたくておいでになったでしょう。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
父上ご自身も急に祖父様らしくなられ候て初孫ういまごあやしホクホク喜びたもうを見てはむしろ涙にござ候、しかし涙は不吉不吉、ご覧候えわれら一家のいかばかり楽しく暮らし候かを
初孫 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
がつなかの五らう退出たいしゆつ間近まぢかやすらかにをんなうまれぬ、おとこねがひしれにはちがへども、可愛かはゆさは何處いづこかはりのあるべき、やれおかへりかと母親はゝおやむかふて、流石さすが初孫ういまごうれしきは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
行儀学問も追々覚えさして天晴あっぱれ婿むこ取り、初孫ういまごの顔でも見たら夢のうちにそなたの母にっても云訳いいわけがあると今からもううれしくてならぬ、それにしても髪とりあげさせ、衣裳いしょう着かゆさすれば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そんなわけで、その初孫ういまごを非常に大切になさるのでした。或日夜更けてから用事のある人が、横堀にあった森の家の辺を通りかかると、あかあかと灯がともっていて、人声もするのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
彼女に取っては初孫ういまごであったお俊を、どんなに心から愛して居たか分らなかった——絶え間もないすゝり泣の声が、はじめは死にかけて居るおかんの胸をも、物悲しく掻き擾さずには居なかった。
極楽 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わたくしが五歳になった年の暮にわたくしの弟貞二郎ていじろうが生れた。母はそれがためわたくしの養育をしばら下谷したやの祖母に托した。祖母の往々にして初孫ういまごの愛におぼれやすきは世にしばしば見るところである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
月満たずして早産うまれおちたすこやかな彼の初孫ういまごなんだ!……
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
同じ取るなら娘の気に入った聟を取って、初孫ういまごの顔を見たいと云うのが親の情合じょうあいじゃアねえか、娘がってあれでなければならないといえば、私には気に入らんでも
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お峰は世間の母親のように、初孫ういまごの顔を見るのを楽しみに安閑とその日を送ってはいられなかった。
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
善「そんな分らぬ事を云ってはいけません、早く養子をして初孫ういまごの顔を見せなければ成りません」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こういうふうであるから、若夫婦の仲にまだ初孫ういまごの顔を見ることの出来ないのをお秀が一つの不足にして、そのほかには加賀屋一家の平和を破るような材料は一つも見いだされなかった。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
國「旦那に御新造ごしんぞうの世話をしたい、おっかさんも初孫ういまごの顔を見てえだろう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)