出合頭であいがしら)” の例文
出合頭であいがしらに突当ろうとしたのは、やはり二人づれの酔どれ、どこぞの部屋のわた仲間ちゅうげんと見える。よくない相手にとっつかまった兵馬は
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
臥床ふしどを出るや否やいそいで朝飯あさはんととのえようと下座敷したざしきへ降りかけた時出合頭であいがしらにあわただしく梯子段はしごだんを上って来たのは年寄った宿の妻であった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
安行父子おやこが今やここのかどを通ると、丁度ちょうど出合頭であいがしらに内から笑いながら出て来た女があった。年は二十二三でもあろう、髪は銀杏返いちょうがえしの小粋なふうであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこらの暗い部屋からひょいと出て来て、出合頭であいがしらに手をひろげ、こう、通せンぼをして立ちふさがった禿かむろがある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何か、かぶれでもしやしないかしら、螢だと思ったものの、それとも出合頭であいがしらに、別の他の毒虫ででもありはしないかと、一度洗面台へ行って洗いましたよ。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のぼるならこちらが楽で安全であると思い直して、出合頭であいがしらの人をわずらわしくけて、ようやく曲り角まで出ると、向うからはげしく号鈴ベルを鳴らして蒸汽喞筒じょうきポンプが来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「では、ちょっと、行って来ます」と云って、室を出ようとすると、出合頭であいがしらに山本桂一が顔を出して
青い風呂敷包 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
些くともこれは大勢同志を比較した統計で、ふだん出合頭であいがしらに鼻の高し低しを見てその人間の文化程度を測定するのは大間違いの初まりではあるまいかと考えられます。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まぢくないの高聲たかごゑみんないとよびつれておもて出合頭であいがしら正太しようた夕飯ゆふめしなぜべぬ、あそびにほうけて先刻さつきにからぶをもらぬか、誰樣どなたまたのちほどあそばせてくだされ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それが出合頭であいがしらに大井と顔を合せると、女のような優しい声で、しかもまた不自然なくらい慇懃いんぎん
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
出合頭であいがしらのつもりかなんぞの、至極しごく気軽きがる調子ちょうしで、八五ろう春重はるしげまえちふさがった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その出合頭であいがしらにバーッと云う様な様子で左足のチョッカイでおどりかかるところなどは人間の子供の遊びと少しもかわらない。
奥まったところの、花やかなしている障子を撫でまわして、紹由がそこを開けようとすると、出合頭であいがしら
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分一人ちょっと島田のうちへ寄ろうとした時、偶然門前の泥溝どぶに掛けた小橋の上に立って往来を眺めていた御縫さんは、ちょっと微笑しながら出合頭であいがしらの健三に会釈した。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ええ、死神のような奴、取附かれてたまるものか。」力に任して突飛ばせば、婆々ばばあへたばる、三吉にげる、出合頭であいがしらに一人の美人、(木賃宿のあの人の)宵月の影鮮麗あざやかなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれ由断がならぬと内儀かみさまに笑はれて、何がなしに耳の根あかく、まぢくないの高声にみんなも来いと呼つれて表へ駆け出す出合頭であいがしら、正太は夕飯なぜ喰べぬ、遊びにほうけて先刻さつきにから呼ぶをも知らぬか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
仙果は何処へか慌忙あわてて出て行こうとする出合頭であいがしら朝帰りの種員を見るや否や、いきなりその胸倉を取って、「乃公おらア今おめえさがしに行こうと思っていた処だ。気をたしかにしな。気をたしかにしな。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
出合頭であいがしらに人が一人通ったので、やにわに棒を突立てたけれども、何、それは怪しいものにあらず
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と紹由の首を抱えこみ、出合頭であいがしらの酔っぱらい同士が、恋人のように汚い頬と頬とをこすり合い
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人のいるさえ予期しておらぬ出合頭であいがしら挨拶あいさつだから、さそくの返事も出るいとまさえないうちに
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
出合頭であいがしらに、それとぶっつかった道庵は
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この腕車くるまいきおいく我善坊を通る時、出合頭であいがしらに横小路より異様なる行列練出ねりいでたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出合頭であいがしらにムクが一声吠えると
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)