何様なにさま)” の例文
旧字:何樣
何様なにさま此れは一行のあるじとでもいいそうな、たしかに華族の若殿様だ。年頃は二十四五、眉濃く眼きりりとした色白の美男子だ。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
何様なにさま、ただ、形のうえより観ずれば、吉岡衆はさだめし大勢でござろうし、この武蔵は、見らるる如くただの一名。勝負にはならぬと小次郎殿も、拙者を
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
問屋場の前の荷物の積み重ねてあるところは、何様なにさまかの家来らしい旅の客が栄吉をつかまえて、何かおどし文句を並べている。半蔵はすぐにその意味を読んだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひさりのせふが帰郷をきゝて、親戚ども打寄うちよりしが、母上よりはかへつせふの顔色の常ならぬに驚きて、何様なにさま尋常じんじやうにてはあらぬらし、医師を迎へよと口々にすゝめ呉れぬ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
大人四人が手をつないでも胴の丸味にはかなわぬという、ずば抜けて大きい杉丸太! 何様なにさまこれじゃ幾年経ってもこの御柱を引き抜こうという強力者ごうりきものは出なかろうて
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
初めて逢つた時は前科者ぢやないかと思つたと主筆の云つた如く、何様なにさま物凄く不気味に見える。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
これはまさしく当時のものであるし、何様なにさま、楠公の遺物ではないかと川崎氏はさらに調査を進めまして、皮をがして見ると、中から正平しょうへい六年六月という年号が出て来ました。
たかゞあれだ、昨夜ゆふべつてかしつた形代かたしろざうが、お天守てんしゆの…何様なにさまちねえところがあるで、約束やくそくとほ奥様おくさまかへさねえもんでがんしよ。だで、ひとこさえさつせえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と息が止るようで、あと退さがってむこう見透みすかすと、向の奴も怖かったと見えて此方こっちのぞく、たがいに見合いましたが、何様なにさま真の闇で、互ににらみあった処が何方どっちも顔を見る事が出来ません。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
真青に澄切ってる、この湖に映じて、如何いかな風流気のない唐変木とうへんぼくも、思わずあっと叫ばずにはおられない、よく談話はなしにきく、瑞西すいつるのゲネパ湖のけいも、くやと思われたのであった、何様なにさま
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
「貴方は何様なにさまで御座いますな。」
久し振りの妾が帰郷を聞きて、親戚しんせきども打ち寄りしが、母上よりはかえって妾の顔色の常ならぬに驚きて、何様なにさま尋常じんじょうにてはあらぬらし、医師を迎えよと口々に勧めくれぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
何様なにさま、旗も煙も、たしかに擬勢ぎせいだ。鹵城は今や空城あきしろにちがいない。いざ追い撃たん」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)