つたは)” の例文
旧字:
ある日、また一場の話がつたはつた。それは町の外れに住んでゐるすきかまくはなどをつくる鍛冶屋の店での出来事であつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
露西亜ロシア人、または名も知らない島々から漂着したり帰化したりした異邦人の末とは違ひ、その血統はむかしの武士の落人おちうどからつたはつたもの、貧苦こそすれ
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
(どッこいしよ、)と暢気のんきなかけごゑで、ながれいしうへ飛々とび/″\つたはつてたのは、呉座ござ尻当しりあてをした、なんにもつけない天秤棒てんびんぼう片手かたてかついだ百姓ひやくしやうぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
修復しゆふく度毎たびごと棟札むねふだあり、今猶歴然れきぜんそんす。毘沙門の御丈みたけ三尺五六寸、往古わうご椿沢つばきざはといふ村に椿の大樹たいじゆありしを伐て尊像そんざうを作りしとぞ。作名さくめいつたはらずときゝぬ。
一体、叙事詩時代からつたはつた情景纏綿の発想法は、短歌様式に特殊な気分をつけてゐるものである。其に力添へる者は、枕詞・序歌・懸け詞・縁語・本歌などである。
不動のうねり、おほらかに、ゆくらゆくらにつたはらむ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
忽ち多くの病室へつたはつて、患者は総立そうだち。『放逐してしまへ、今直ぐ、それが出来ないとあらば吾儕われ/\こぞつて御免を蒙る』と腕捲うでまくりして院長をおびやかすといふ騒動。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
修復しゆふく度毎たびごと棟札むねふだあり、今猶歴然れきぜんそんす。毘沙門の御丈みたけ三尺五六寸、往古わうご椿沢つばきざはといふ村に椿の大樹たいじゆありしを伐て尊像そんざうを作りしとぞ。作名さくめいつたはらずときゝぬ。
真の象徴発想をひらいたであらうに、黒人から赤人に、赤人から家持につたはつた調子の「細み」と、かそかでそして和らぎを覚える「趣き」は、彼にも完成せられず、壬生忠岑になつて
やがて、これが、一面いちめんくさつたはつて、次第しだいにひら/\と、ふもとりて遊行ゆぎやうしやう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これに限らず、さうした不思議の話は、その近所の町と村とを中心にして波動のやうにしてつたはつて行つた。ある時はひそかにあによめに通じてゐた小商人こあきうどの店にあらはれて、それをして悔い改めさせた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ことばの無い声は聞くものゝ胸から胸へつたはつた。送る人も、送られる人も、暫時しばらく無言の思を取交したのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)