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仰向
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あおむき
ふりがな文庫
“
仰向
(
あおむき
)” の例文
母はいつもと同じように右の肩を下に、自分の方を向いて、少し
仰向
(
あおむき
)
加減に軽く口を結んでいかにも
寝相
(
ねぞう
)
よくすやすやと眠っている。
寐顔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
書生の指さす所を見ると、犬小屋から大分離れた、庭の芝生に、一人の女が、青白い月光に照らされて、
仰向
(
あおむき
)
ざまに打倒れていた。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
田中君はスキ焼の主唱者だけあって、大変食べた。
傍
(
はた
)
で見ていて
羨
(
うらや
)
ましいほど食べた。余はしようがないから畳の上に
仰向
(
あおむき
)
に寝ていた。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鬱陶敷
(
うっとうしく
)
て、気が滅入って、幾ら書いても思う様に書けないから、私はホッとして、頭を抱えて、
仰向
(
あおむき
)
に倒れて茫然としていたが
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
即ち、当夜の主人公たるD外務大臣が、胸部をピストルで打たれて、椅子から
辷
(
すべ
)
り落ち、床の上に
仰向
(
あおむき
)
に斃れていたのである。
外務大臣の死
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
▼ もっと見る
是等
(
これら
)
の人々何が為に此室にきたりたるぞ、余は怪むひまも無く床の真中に血に塗れたる死骸あるに気附たり、小柄なる白髪の老人にして
仰向
(
あおむき
)
に
打倒
(
うちたお
)
れ
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
やがて出窓の
管簾
(
くだすだれ
)
を
半
(
なか
)
ば
捲
(
ま
)
いた下で、
腹
(
はら
)
ンばひに成つたが、
午飯
(
おひる
)
の済んだ
後
(
あと
)
で
眠気
(
ねむけ
)
がさして、くるりと
一
(
ひと
)
ツ廻つて、姉の
針箱
(
はりばこ
)
の方を
頭
(
つむり
)
にすると、足を投げて
仰向
(
あおむき
)
になつた。
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
鳩尾
(
みぞおち
)
の
辺
(
あたり
)
をどんと突きまする。突かれて
仰向
(
あおむき
)
に倒れる処を
乗掛
(
のッかゝ
)
って
止
(
とゞ
)
めを刺しました処が、側に居りましたお梅は驚いて、ぺた/\と腰の抜けたように
草原
(
くさはら
)
へ坐りまして
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
降
(
くだ
)
りに降った、歩きに歩いた、既に疲労を感じいる一行は、更に不安に襲われた、
就中
(
なかんずく
)
M氏は困憊の極に達したかの如く、もう休もうと云っては、処きらわず草原の上に
仰向
(
あおむき
)
に倒れて了う。
武甲山に登る
(新字新仮名)
/
河井酔茗
(著)
この鉱山のために炭を焼きて生計とする者、これも笛の
上手
(
じょうず
)
にて、ある日
昼
(
ひる
)
の
間
(
あいだ
)
小屋
(
こや
)
におり、
仰向
(
あおむき
)
に
寝転
(
ねころ
)
びて笛を吹きてありしに、小屋の口なる
垂菰
(
たれごも
)
をかかぐる者あり。驚きて見れば猿の
経立
(
ふったち
)
なり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
またかの
筍掘
(
たけのこほ
)
りが力一杯に筍を引抜くと共に両足を
空様
(
そらざま
)
にして
仰向
(
あおむき
)
に転倒せる図の如きは
寔
(
まこと
)
に
溌剌
(
はつらつ
)
たる活力発展の状を
窺
(
うかが
)
ふに足る。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
腕組をして枕元に
坐
(
すわ
)
っていると、
仰向
(
あおむき
)
に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、
輪郭
(
りんかく
)
の
柔
(
やわ
)
らかな
瓜実
(
うりざね
)
顔
(
がお
)
をその中に横たえている。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ずッと寄ると袖を開いて、姉御は何と思ったか、滝太郎の
頸
(
うなじ
)
を抱いて、
仰向
(
あおむき
)
の顔を
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
看護婦はすでに帰った
後
(
あと
)
なので、
室
(
へや
)
の中はことに
淋
(
さみ
)
しかった。今まで
蒲団
(
ふとん
)
の上に
胡坐
(
あぐら
)
をかいていた彼は急に倒れるように
仰向
(
あおむき
)
に寝た。そうして
上眼
(
うわめ
)
を使って窓の外を見た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三尺
(
さんじゃく
)
を腰低く前にて結びたる
遊
(
あそ
)
び
人
(
にん
)
らしき男一人、両手は
打斬
(
うちき
)
られし如く両袖を落して、少し
仰向
(
あおむき
)
加減に大きく口を明きたるは、春の
朧夜
(
おぼろよ
)
を
我物顔
(
わがものがお
)
に
咽喉
(
のど
)
一杯の声張上げて
投節
(
なげぶし
)
歌ひ行くなるべし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
いつまで
経
(
た
)
っても留らなかったり、あるいは
仰向
(
あおむき
)
に眺めている
天井
(
てんじょう
)
がだんだん上から下りて来て、私の胸を
抑
(
おさ
)
えつけたり、または眼を
開
(
あ
)
いて普段と変らない周囲を現に見ているのに
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だらだら坂を登ると、自然と顔が
仰向
(
あおむき
)
になる。すると例の通り長屋から、坑夫が
頬杖
(
ほおづえ
)
を突いて、自分を
見下
(
みおろ
)
している。さっきまではあれほど
厭
(
いや
)
に見えた顔がまるで
土細工
(
つちざいく
)
の人形の首のように思われる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
仰
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“仰向”で始まる語句
仰向反
仰向様