交叉かうさ)” の例文
おつぎがあらざらしのあはせてゝ辨慶縞べんけいじま單衣ひとへるやうにつてからは一際ひときはひと注目ちうもくいた。れいあかたすきうしろ交叉かうさしてそでみじかこきあげる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
次に私の覺えてゐるのは、恐ろしい夢魔むまに襲はれたやうな感じで目が覺めて、目の前に凄まじい紅い炎が、太い黒い棒と交叉かうさしてゐるのを見たことだつた。
直刀ちよくたうが二ほん交叉かうさしてある。鐵環てつくわんくつわ槍先やりさき祝部いはひべ土器等どきとうが、其所此所そここゝかれてある。
十字に交叉かうさしたみちを右に折れると、やがてわたしの選んだ旅店やどやの前に車夫は梶棒かぢぼうおろした。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
北の淡路町を大塩の同勢が一歩先に西へ退くと、それと併行した南の瓦町通かはらまちどほりを坂本の手の者が一歩遅れて西へ進む。南北に通じた町を交叉かうさする毎に、坂本は淡路町の方角を見ながら進む。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しな蒲團ふとんいてつたので勘次かんじはそれへごろりと俯伏うつぶしになつてひたひ交叉かうさしたうづめた。うちものみななければならなかつた。病人びやうにんかまつてることは仕事しごとゆるさなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は道の交叉かうさした處や拔道などを通つて、もう一度草原のあたりに足を引摺つた。そして今、殆んどヒースと選ぶ處のない位荒れ果てゝ了つた僅かばかりの畑が、私と薄暗がりの丘とをへだてゝゐた。
きはめてそつとしかさわがしさううごくもたかひく反對はんたい方向はうかう交叉かうさしつゝあるのをるとともに、枯燥こさうしかけた草木くさきあひあひつてはだん/\とやぶれつゝざわ/\とかなしげなひゞきてゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)