二見ふたみ)” の例文
その中に一際目立つ烏帽子えぼし型の大岩があって、その大岩の頂に、丁度二見ふたみうら夫婦めおと岩の様に、石で刻んだ小さな鳥居が建ててある。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さては五十鈴いすずの流れ二見ふたみの浜など昔の草枕にて居眠りの夢を結ばんとすれどもならず。大府おおぶ岡崎御油ごゆなんど昔しのばるゝ事多し。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
二見ふたみじゃ初日を拝んで、堺橋から、池の浦、沖の島で空が別れる、上郡かみごおりから志摩へ入って、日和山ひよりやまを見物する。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また、「妹も吾も一つなれかも三河なる二見ふたみの道ゆ別れかねつる」(同・二七六)というのもある。三河の二見は御油ごゆから吉田よしだに出る二里半余の道だといわれている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
虚心きょしん流無二のつかい手であるように、右近は、芸州浪人と名乗っているだけに、かの二見ふたみうらの片ほとりに発達しきたった、天馬てんまくうをゆく独特の速剣そくけん観化流かんげりゅう大統たいとうをつたうる
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
松宇しょうう氏来りて蕪村ぶそん文台ぶんだいといふを示さる。あま橋立はしだての松にて作りけるとか。木理もくめあらく上に二見ふたみの岩と扇子せんすの中に松とを画がけり。筆法無邪気にして蕪村若き時の筆かとも思はる。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
海濱かいひん其處此處そここゝには、毛布ケツトや、帆布ほぬのや、其他そのほか樣々さま/″\武器等ぶきとう應用おうようして出來できた、富士山ふじさん摸形もけいだの、二見ふたみうら夕景色ゆふげしきだの、加藤清正かとうきよまさ虎退治とらたいぢ人形にんぎようだのが、奇麗きれいすなうへにズラリとならんだ。
香嶠こうきようさんの塾の二見ふたみ文耕ぶんこうさん、後に小坡と云ふ名になり伊藤姓になられたのはずつと後だと思ふが、その小坡さんや六人部むとべ暉峰きほうさん、景年さんの塾の小栗何とか言はれた人、夫れに私の六人が
写生帖の思ひ出 (新字旧仮名) / 上村松園(著)
然れども山水としてその最も上乗じょうじょうなるものは伊勢いせ二見ふたみうら日出ひのでけい、または Gillotジョオ 蒐集板画目録中に載せられたる三枚続にして、樹木茂りし丘陵の彼方かなたはるかに雪の富士巍然ぎぜんとしてそび
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二見ふたみうらにかくれしが
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
甲吉 今里二見ふたみ
犬は鎖に繋ぐべからず (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
お帰りには二見ふたみヶ浦、これは申上げるまでもござりませぬ、五十鈴川の末、向うの岸、こっちの岸、枝の垂れた根上り松にもやいまして、そこへ参る船もござります。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝よくてうになつてると、海潮かいてうほとん平常へいじやうふくしたが、見渡みわたかぎり、海岸かいがんは、濁浪だくらう怒濤どたうためあらされて、昨日きのふうるはしく飾立かざりたてゝあつた砂上しやじやう清正きよまさ人形にんぎようも、二見ふたみうら模形もけいも、椰子林やしばやし陣屋ぢんや
此処ここ二見ふたみの浦づたい。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)