“ひっくりかえ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
転覆31.3%
顛倒15.6%
顛覆15.6%
引繰返12.5%
卒倒3.1%
引覆3.1%
引転覆3.1%
引返3.1%
引顛返3.1%
転倒3.1%
顛動返3.1%
顛覆返3.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
野辺の送りを致すやら実に転覆ひっくりかえるような騒ぎ、それで段々延々のび/\になっての娘の事をきくもないほどの実に一通りならん愁傷で、まず初七日しょなぬかの寺詣りも済みましたが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
口惜くやしくってたまらないからおあさの足へかじり付きますと、ポーンとられたから仰向あおむけ顛倒ひっくりかえると、頬片ほっぺたを二つちました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
オヤオヤこんなつもりではなかったとたちまち怖くなって来る処へ風が起り雨が降って海が荒れ出して来ると舟が今にも顛覆ひっくりかえりはしないかと思って生きた心持のしないような事もあります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
方々ほうぼうの室から、呼鈴べるの電線がつづいているので、その室で呼ぶと、此処ここ電鈴べるが鳴って、その室の番号のついてる札が、パタリと引繰返ひっくりかえるという風になっているのだが、何しろ
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
船員も乗客も一斉にデッキを目がけて飛び出して来た。御丁寧な奴は卒倒ひっくりかえったという話だが……しかしこっちは眼をわすどころの騒ぎじゃない。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
貴下様あなたさま、もうこれ布子から単衣ひとえものと飛びまする処を、今日こんにちあたりはどういたして、また襯衣しゃつ股引ももひきなどを貴下様、下女の宿下り見まするように、古葛籠ふるつづら引覆ひっくりかえしますような事でござりまして
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と叫んで、飛上ると、蜜柑みかん空箱からばこを見事に一個ひとつ、がた、がたんと引転覆ひっくりかえして、松小僧は帳場口へどんと退さがって
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
医者は、一寸ちょっと女の眼瞼まぶた引返ひっくりかえして見て
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ト木彫のあの、和蘭陀オランダ靴は、スポンと裏を見せて引顛返ひっくりかえる。……あおりをくつて、論語は、ばら/\と暖炉に映つて、かっと朱をそそぎながら、ペエジひらく。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この平素ふだん信じていたことを——そうだ、よく彼女に向って、誰某だれそれは女でもなかなかのシッカリものだなどと言ってめて聞かせたことを、根から底から転倒ひっくりかえされたような心地こころもちに成った。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ぎゃっと云って、その男が、すさまじい音で顛動返ひっくりかえってしまったんですってね。……夜番は駆けつけますわ、人は騒ぐ。気の毒さも、面目なさも通越して、ひけめのあるのは大火傷の顔のお化でしょう。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時自分は顛覆返ひっくりかえった炬燵こたつを想像していた。げた蒲団ふとんを想像していた。みなぎる煙と、燃えるたたみとを想像していた。ところが開けて見ると、洋灯ランプは例のごとくともっている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)