顛倒ひっくりかえ)” の例文
その小娘の十四になるのがにしんを一把持っていたが、橋の中央に往ったところで突然顛倒ひっくりかえって、起きた時には鰊はもう無かった。
堀切橋の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
口惜くやしくってたまらないからおあさの足へかじり付きますと、ポーンとられたから仰向あおむけ顛倒ひっくりかえると、頬片ほっぺたを二つちました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
心得違いの気の入れどころが顛倒ひっくりかえっていたのであるから、手玉に取って、月村に空へ投出されたように思った。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天秤棒に肩を入れ、えいやっと立てば、腰がフラ/\する。膝はぎくりとれそうに、体は顛倒ひっくりかえりそうになる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ああああ——まるで自分のたましいは顛倒ひっくりかえってしまった」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男「おい/\番頭さん見てやれ/\、長く湯にへえっていたものだから眼がまわって顛倒ひっくりかえったのだろう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お時は一声叫ぶなり仰向けに顛倒ひっくりかえったが、やっと正気づいて逃げ帰って三日工場を休んだ。
堀切橋の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)