転覆ひっくりかえ)” の例文
旧字:轉覆
鼠が棚へ上ったものだから、猫も棚へ飛上って薬瓶を転覆ひっくりかえした。薬室は散々になったけれども、薬室よりも散々な目に遇ったのは猫である。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
野辺の送りを致すやら実に転覆ひっくりかえるような騒ぎ、それで段々延々のび/\になっての娘の事をきくもないほどの実に一通りならん愁傷で、まず初七日しょなぬかの寺詣りも済みましたが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……如何いかがはしいが、生霊いきりょうふだの立つた就中なかんずく小さなまと吹当ふきあてると、床板ゆかいたがぐわらりと転覆ひっくりかえつて、大松蕈おおまつたけを抱いた緋のふんどしのおかめが、とんぼ返りをして莞爾にこり飛出とびだす、途端に
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
或る書生さんが自転車の書物を買って二度も三度も読み返してモー自転車の乗り方を覚えたと自転車を買って乗ったところが転覆ひっくりかえって一尺も先へ出なかったという話しがあります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
すると馬鹿馬鹿しく反んで、つい鏡に打付ぶつかったんだ。それが又跳ね返って香水の瓶を転覆ひっくりかえしたんだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
重三じゅうざが死んでも申し訳の立つ訳ではないのだから、実にうち転覆ひっくりかえるような騒ぎで、それに丁度政七も重三郎も厄年だから、川崎の大師さまへ参って護摩をあげて厄除やくよけをし
坐ってる人が、ほんとに転覆ひっくりかえるほど、根太ねだから揺れるのでない証拠には、私が気を着けています洋燈ランプは、躍りはためくその畳の上でも、じっとして、ちっとも動きはせんのです。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
泣いたり、えたり、気を失ったり、テーブルを転覆ひっくりかえしたり、御丁寧にランプまでこわして騒ぎを入れるには当らない事だ。お春さんは衣服きものを少しやぶき、お歌さんは手を火傷した。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
生霊いきりょうと札の立った就中なかんずく小さな的に吹当てると、床板ががらりと転覆ひっくりかえって、大松蕈おおまつたけを抱いたふんどしのおかめが、とんぼ返りをして莞爾にっこりと飛出す、途端に、四方へ引張ひっぱった綱が揺れて
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
割合にふとって居て頭が大きいから、駈けるとよろけて転覆ひっくりかえる事がありますが、一寸ちょっと見ると写しの口上云い見たいで、なんだか化物屋敷へ出る一ツ目小僧の茶給仕のようでありますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云いながらポーンと膳を片手で突きましたから、膳は転覆ひっくりかえる、茶椀蒸はこぼれる。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
店の端先はなさきへ出て旦那もお内儀かみさんも見ている処へ抜身ぬきみげた泥だらけの侍が駈込んだから、わッと驚いて奥へ逃込もうとする途端に、ふかしたての饅頭まんじゅう蒸籠せいろう転覆ひっくりかえす、煎餅せんべいの壺が落ちる
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)