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どうれう
「
住居は
燒けました。
何もありません。——
休息に、
同僚のでも
借りられればですが、
大抵はこのまゝ
寢ます。」との
事だつたさうである。
ハヾトフは
折々病氣の
同僚を
訪問するのは、
自分の
義務で
有るかのやうに、
彼の
所に
蒼蠅く
來る。
彼はハヾトフが
嫌でならぬ。
同僚は
小形の
黄色い
表紙を
宗助の
前に
出して、こんな
妙な
本だと
答へた。
宗助は
重ねて
何んな
事が
書いてあるかと
尋ねた。
同僚は
強く
緊張した
宗助の
顏を
見て
頗る
驚ろいた
樣子であつたが、いや
遣らない、たゞ
慰み
半分にあんな
書物を
讀む
丈だと、すぐ
逃げて
仕舞つた。
先刻宗助の
樣子を、
氣の
毒に
觀察した
同僚は、
彼の
質問の
奧に
雜談以上のある
意味を
認めたものと
見えて、
前よりはもつと
親切に
其方面の
話をして
聞かした。