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せんちやう
决して
愚なる
船長の
言ふが
如き、
怨靈とか
海の
怪物とかいふ
樣な
世に
在り
得可からざる
者の
光ではなく、
緑、
紅の
兩燈は
確に
船の
舷燈で
船長の
命の
下に、
水夫は
一躍して
難に
赴き、
辛うじて
法華僧を
救ひ
得たり。
序だから
言つて
置くが、
私は
初め
此船に
乘組んだ
時から
一見して
此船長はどうも
正直な
人物では
無いと
思つて
居つたが
果して
然り、
彼は
今
いや
爰でこそ、
呑気らしい
事をいふものゝ、
磊々たる
巉巌の
尖頂へ
攀ぢて、
大菩薩の
小さな
祠の、たゞ
掌に
乗るばかり……といつた
処で、
人間のではない、
毘沙門天の
掌に
据ゑ
給ふ。