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齲歯
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むしば
ふりがな文庫
“
齲歯
(
むしば
)” の例文
旧字:
齲齒
物を食べるころになると、子供も同じように
齲歯
(
むしば
)
に悩まされた。笹村はそこにも、自分の体を年々侵しているらしい悪い血を見た。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ある時佐助
齲歯
(
むしば
)
を病み右の頬が
夥
(
おびただ
)
しく
脹
(
は
)
れ上り夜に入ってから苦痛
堪
(
た
)
え難きほどであったのを
強
(
し
)
いて
怺
(
こら
)
えて色に表わさず折々そっと
合嗽
(
うがい
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
家の財政のことなど知らない子供の私なぞは、
却
(
かえ
)
って奥の
齲歯
(
むしば
)
の抜けたあとのあの涼しさや珍らしさのようなものさえ、すう/\感じました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
触
(
ふれ
)
れば益々痛むのだが、その痛さが
齲歯
(
むしば
)
が痛むように
間断
(
しッきり
)
なくキリキリと
腹
(
はらわた
)
を
挘
(
むし
)
られるようで、耳鳴がする、頭が重い。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
女はその前を通りがかった三人を無遠慮に眺めながら、音を立てて
齲歯
(
むしば
)
をすった。おくれ咲きの白梅の花が見える東屋のところで彼等は腰をおろした。
道づれ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
それを見て秀吉が、三木城の
要害堅固
(
ようがいけんご
)
を、自分の
齲歯
(
むしば
)
にたとえていったので、おかしいやら痛いやら、頬を抱えて苦笑せざるを得なかったわけである。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美智子は、朝から
齲歯
(
むしば
)
が痛んで、とう/\朝御飯も喰べませんでした。眼に触れるものが悉く疳癪にさわりました。焦れツたくて/\堪りませんでした。
美智子と歯痛
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
もともと私は歯性はよかつたのに、いつ頃か、一本の
齲歯
(
むしば
)
に悩むやうになつて、それが次第に増えて行つたのだ。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
牧師といふものは
平素
(
ふだん
)
から自分のいふ事だつたら、どんな不機嫌な折でも(よしんば
齲歯
(
むしば
)
が痛むで
居
(
を
)
らうと)
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
翌る夜は頭を、翌る夜は踵を、又翌る夜は
齲歯
(
むしば
)
を、目を、肋骨を、肩を、耳を。鮎子は禿鷹の険しい眼差を光らせて敏捷に身構へながら、僕の油断を鋭く窺ふ。
海の霧
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
その下歯の、犬歯の前に一本、黒い
齲歯
(
むしば
)
があった。歯医者にでもかかったらよさそうなものを、どういうのか、小さくいじけた黒いままに、いつまでも放ってあった。
不肖の兄
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
花岡岩をすら、
齲歯
(
むしば
)
のやうにボロボロに欠きくづして、青色の光線を峡谷に放射し、反射して、心のまゝ、思のまゝに、進行する見事なる
峡流
(
カニヨン
)
の姿は、豪奢な羽を精一杯にひろげて
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
ややもすれば歯痛に
苦
(
くるし
)
められて、上下に幾枚の義歯を
嵌
(
は
)
め込んでいた。その義歯は
柘植
(
つげ
)
の木で作られていたように記憶している。私は父の系統をひいて、子供の時から
齲歯
(
むしば
)
の患者であった。
はなしの話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
おいらの先祖の
鎮西八郎為朝公
(
ちんぜいはちろうためともこう
)
じゃあねえが、お望みのところを打って上げるから申し出な、頭痛、目まい、立ちくらみ、
齲歯
(
むしば
)
の病、
膏薬
(
こうやく
)
を貼ってもらいてえお立合は、遠慮なく申し出な
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その頃僕は
齲歯
(
むしば
)
に悩まされていて、内ではよく
蕎麦掻
(
そばがき
)
を食っていた。そこで、御近所に蕎麦の看板があったから、蕎麦掻を御馳走になろうと云った。主人がこれは面白い御注文だと云って笑う。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自分は客と話しながら、入院の
支度
(
したく
)
を急いでいる妻や伯母を意識していた。すると何か舌の先に、
砂粒
(
すなつぶ
)
に似たものを感じ出した。自分はこのごろ
齲歯
(
むしば
)
につめたセメントがとれたのではないかと思った。
子供の病気:一游亭に
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
主婦
(
あるじ
)
はランプの蔭で、ほどきものをしながら
齲歯
(
むしば
)
を気にしている母親を小突いた。お庄は火鉢の傍で、
宵
(
よい
)
の口から主婦の肩をたたいていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「——
所詮
(
しょせん
)
、急には抜けますまい。まわりは朽ちているようでも、まだ根は深い
齲歯
(
むしば
)
のようなものですからな」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、その日の牛肉は男爵にもなれないで、一生
扱
(
こ
)
き使はれた
古牛
(
ひねうし
)
の肉だつたので、
齲歯
(
むしば
)
の多い岩村男にとつては、噛み切るだけが
却々
(
なか/\
)
容易な事ではなかつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その程度の無駄な厚意は
齲歯
(
むしば
)
が疼く時でさへ気分によつてはやりかねないのだ。
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
ややもすれば歯痛に苦しめられて、上下に幾枚の義歯を
嵌
(
は
)
め込んでいた。その義歯は
柘植
(
つげ
)
の木で作られていたように記憶している。私は父の系統をひいて、子供の時から
齲歯
(
むしば
)
の患者であった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
齲歯
(
むしば
)
一本について一点ずつひくんだそうだ。だもん、どこの親でも躍起となるね。何かでチョイチョイと埋めてさえありゃ引かないんだそうだから、歯医者は繁昌して、夜まで子供で一杯だったとさ。
昔の火事
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
お君さんはあのカッフェを
解傭
(
かいよう
)
される事になったのであろうか。さもなければお松さんのいじめ方が一層
悪辣
(
あくらつ
)
になったのであろうか。あるいはまたさもなければ
齲歯
(
むしば
)
でも痛み出して来たのであろうか。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
齲歯
(
むしば
)
の見える口元も
弛
(
ゆる
)
んで、浮いた調子の駄洒落などを言って独りで笑いこけていた。お銀の体には、酒を飲むと気の浮いて来る父親の血が流れているらしかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
将軍家は歯医者に
齲歯
(
むしば
)
の療治でもして貰ふ折のやうに、箸を手に持つたまゝぽかんと口を
開
(
あ
)
けてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
三木城の嶮とその抵抗力は、歯肉に頑強な根を持っている
齲歯
(
むしば
)
にも似ている。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この恩典の手前としても私は今日は
齲歯
(
むしば
)
が痛むからといふ言訳で五十五分に切上げる分別さへ出来ないのであつた。マラルメは頽廃派だから歯が痛むと唄つてゐるが、私は齲歯を痛めてもならない。
母
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
そして相手があんぐり口を
開
(
あ
)
けて、
齲歯
(
むしば
)
の痛みを覗き込まうとも、そんな事は頓着しなかつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
母親は
齲歯
(
むしば
)
の
痛痒
(
いたがゆ
)
く腐ったような肉を吸いながら、
人事
(
ひとごと
)
のように聞いていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この恩典の手前としても私は今日は
齲歯
(
むしば
)
が痛むからという言訳で五十五分に切上げる分別さえ出来ないのであった。マラルメは
頽廃派
(
たいはいは
)
だから歯が痛むと
唄
(
うた
)
っているが、私は齲歯を痛めてもならない。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「なるほど、
齲歯
(
むしば
)
とはおもしろい。抜くには、根気が
要
(
い
)
るの」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ムニユイジエー」は指物師の事だが、さういふと、領事は二つ返事で直ぐ承知して、門の
修繕
(
ていれ
)
は
愚
(
おろか
)
な事、
齲歯
(
むしば
)
の手当から、臍の掃除まで指物師にさし兼ねない程にこ/\顔である。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
笹村は
齲歯
(
むしば
)
が痛み出して、その晩おそくまで眠られなかった。笹村は
逆上
(
のぼ
)
せた
頭脳
(
あたま
)
を
冷
(
さ
)
まそうとして、男衆に戸を開けさせて外へ出た。外は雨がしぶしぶ降って、空は
真闇
(
まっくら
)
であった。風も出ていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
齲歯
(
むしば
)
むすめ
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
齲
漢検1級
部首:⿒
24画
歯
常用漢字
小3
部首:⽌
12画
“齲”で始まる語句
齲
齲齒
齲齒笑