頓智とんち)” の例文
身振りや言葉や逆説的な頓智とんち滑稽こっけいな気分などを振りまいて、自分を消費しなければならなかった。そして道化歌劇オペラ・ブッファを演じていた。
どこの級にも、頓智とんちがあってたいへん口が軽く、気の利いたことを言っては皆を笑わせることの好きなおろかな生徒が一人や二人はあるものです。
大きな蝙蝠傘 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
「お父さん、それ頓智とんちの問題じゃないのですか。ほんとうに火がもえなくても、ただ口さきの頓智でうまく答えればいいのじゃないのですか」
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まるで竹童の手から狐火きつねびがふりだされるようだったが、いつもの頓智とんちず、蛾次郎がふところにある水性すいせいのふせぎ独楽ごまに気がつかず、ただ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、ここでは、一休いっきゅうさんの頓智とんちを、こどもたちにもおもしろくて、ためになる、ということにおきかえてきました。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
「いつも、馬鹿ばつか云つて、みんなを笑はしてゐさしたつけが、ほんに、あんな頓智とんちのいゝ人つてあつたもんでねえ。」
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
出し且又はなしの内に立せ間敷まじく其爲そのため朋輩ほうばいを頼み置きたりおはなしあらば心靜かに咄し給へといと發明はつめいなる働に傳吉は其頓智とんち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
余は今日こんにちの新聞紙雑誌等に見るポンチに比すれば、浮世絵師が滑稽頓智とんちの妙と観察の機敏なるに驚かずんばあらず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一旦いったん帰京かえって二度目にまた丁度ちょうど行きつきたる田原がきい狼狽ろうばいし、わが書捨かきすてて室香に紀念かたみのこせし歌、多分そなたがしって居るならんと手紙の末にかき頓智とんちいだ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
 の如き巧拙は異なれどもその意匠の総て諧謔に傾き頓智とんちによる処ことごとく相似たり。以て全豹ぜんぴょうすべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかるに上述のごとき諸例あるを見れば、猴類が頓智とんちに富みその境涯に迎合する力大なるを知るべし。
何とかして二人を引離す頓智とんちはないものかと考えたが、咄嗟とっさのこととてうま術策すべが浮かんでこない。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかものべつに彼一流の奇妙な言葉を使うのだったが、それは永年の頓智とんち修行によって編み出されたもので、明らかにもう久しい前から習慣になりきっているらしかった。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これは江戸役人の頓智とんちで、死物狂いの囚人を残らず召捕めしとろうと致しますと、どんな騒動を仕出来しでかすかも知れませぬ故、一時其の場を治めるためにわざと文治一人いちにんを引立てたのでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼女は面白いほど率直で、おかしな頓智とんちに富んでいた。二人はあたりの人々にお構いなしで、笑いながら声高く感想を語り合った。
ば助けつかはさんコリヤ十兵衞とよばれし時十兵衞は始終の樣子を聞て大岡殿の頓智とんちしたまきまことに恐れ入て冷汗ひやあせを流し居たりしゆゑ急に答へもいでず平伏するを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だが、旅の男は、なかなか頓智とんちのある人で、うまい方法を考えついた。彼は、その辺に落ちていた木の枝を拾って、それを刀になぞらえ、色々な恰好かっこうをして見せた。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
唯ゴンクウルが何らの道徳的判断を下さず純然たる芸術的興味にもとづき自由に完全にこれを観察しなほかかる場合には往々浮世絵師の喜んでなす突飛とっぴなる滑稽こっけい頓智とんちみょうを能く了解したる事
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一休いっきゅうさんの頓智とんちというものは、まるで、とぎすましたやいばのような、するどさで、もし、一休いっきゅうさんが、仏門ぶつもんはいってとくをみがいたのでなければ、大分だいぶ危険きけんなようにさえおもわれるところもあるくらいです。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
早速の頓智とんちで馬に群衆中より帽に十字を帯びた一人を選んで低頭跪拝きはいせしめ、魔使ならこんな真似をせぬはずと説いて免れたという、その前後馬が芸をして魔物と疑われ火刑を受けた例少なからぬ。
其方てらはうむりし趣きなるが右は當時たうじ無縁むえんなるか又はしるし石塔せきたふにてもたてありやと尋けるに此祐然もとより頓智とんち才辨さいべんの者故參候若君わかぎみ澤の井の石塔せきたふは御座候も香花かうげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
近所のおばさんなんかは、一太郎君を「頓智とんちがうまい」といってほめましたが、一太郎君の智恵はただの頓智ではなくて、何でもすじみちを立てて、よく考えてみるという智恵なのです。
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)