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あいたい
ふりがな文庫
“
靉靆
(
あいたい
)” の例文
時
(
とき
)
に、
真先
(
まつさき
)
に、
一朶
(
いちだ
)
の
桜
(
さくら
)
が
靉靆
(
あいたい
)
として、
霞
(
かすみ
)
の
中
(
なか
)
に
朦朧
(
もうろう
)
たる
光
(
ひかり
)
を
放
(
はな
)
つて、
山懐
(
やまふところ
)
に
靡
(
なび
)
くのが、
翌方
(
あけがた
)
の
明星
(
みやうじやう
)
見
(
み
)
るやう、
巌陰
(
いはかげ
)
を
出
(
で
)
た
目
(
め
)
に
颯
(
さつ
)
と
映
(
うつ
)
つた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
空襲の頻々たるころ、この老桜が
纔
(
わずか
)
に
災
(
わざわい
)
を免れて、年々香雲
靉靆
(
あいたい
)
として戦争中人を慰めていたことを思えば、また無量の感に打れざるを得ない。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ために、
祁山
(
きざん
)
の草は幾十日も兵に踏まるることなく、雪は解けて、山野は
靉靆
(
あいたい
)
たる春霞をほの紅く染めて来た。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
早くこの若者を
靉靆
(
あいたい
)
とした気持にさせてやりたい薄霧のような熱情が、かの女の身内から
湧
(
わ
)
きあがった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
八千メートル……八千五百……九千……九千八百メートル……ようやくのことで主砲射程外に逃れ得て
吻
(
ほ
)
っとしたが、その時暮色
靉靆
(
あいたい
)
たる左舷西方遥か水平線の彼方に
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
恋する以上は霞の
靉靆
(
あいたい
)
としているような、梵鐘の鳴っているような、桜の爛漫としているような、丹椿の沈み匂うているような、もしくは火山や深淵の側に立っているような
女性の諸問題
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
靉靆
(
あいたい
)
たる暮色が、山伏、大洞、足柄の峰つづきに押し
罩
(
こ
)
もって、さざなみ雲のうえに、
瘤
(
こぶ
)
のように肩を出している宝永山の一面にだけ、相模潟の入り陽が、かっと照り映えていた。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
今神仙の
噫気
(
あいき
)
を秘蔵するか、かゝる明夜に、
靉靆
(
あいたい
)
として立ち昇る白気こそあれ、何物たるかを端知せむと欲して、
袖庇
(
しうひ
)
に耐風マッチを
擦
(
さつ
)
するも、全く用を成さず、試に拳石を転ずるに
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
居ながらにして
幽邃閑寂
(
ゆうすいかんじゃく
)
なる
山峡
(
さんきょう
)
の
風趣
(
ふうしゅ
)
を
偲
(
しの
)
び、
渓流
(
けいりゅう
)
の
響
(
ひびき
)
の
潺湲
(
せんかん
)
たるも尾の上の
桜
(
さくら
)
の
靉靆
(
あいたい
)
たるもことごとく心眼心耳に浮び来り、花も
霞
(
かすみ
)
もその声の
裡
(
うち
)
に備わりて身は
紅塵万丈
(
こうじんばんじょう
)
の都門にあるを忘るべし
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
靉靆
(
あいたい
)
たる
怪雲
(
くわいうん
)
漸次に消散し風雨
暫
(
しば
)
らくにして
已
(
や
)
みぬ。
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
春眠や
靉靆
(
あいたい
)
として白きもの
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
けれどこの一城市に
靉靆
(
あいたい
)
とたなびいている
瑞気
(
ずいき
)
というようなものを、石川数正は見のがせなかった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「秋の雲、
靉靆
(
あいたい
)
と、あの
鵄
(
とび
)
たちまち
孔雀
(
くじゃく
)
となって、その翼に召したりとも思うお姿、さながら夢枕にお立ちあるように思出しましたは、
貴女
(
あなた
)
、
令嬢様
(
おあねえさま
)
、貴女の事じゃ。」
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多く言うを要しない
知己
(
ちき
)
の
快
(
こころよ
)
さが、胸から胸へと
靉靆
(
あいたい
)
としてただよう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
癪
(
しゃく
)
に触る現在の境遇をしばし忘れて、
靉靆
(
あいたい
)
とした気持になれた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
たてに、
斜
(
ななめ
)
に、上に、下に、散り、飛び、
煽
(
あお
)
ち、舞い、漂い、乱るる、雪の中に不忍の池なる天女の楼台は、
絳碧
(
こうへき
)
の幻を、
梁
(
うつばり
)
の虹に
鏤
(
ちりば
)
め、桜柳の面影は、
靉靆
(
あいたい
)
たる
瓔珞
(
ようらく
)
を
白妙
(
しろたえ
)
の中空に
吹靡
(
ふきなび
)
く。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「もうだいぶ
酩酊
(
めいてい
)
ぎみだよ。日も
靉靆
(
あいたい
)
と暮れかかるし、
心気
(
しんき
)
は
朦朧
(
もうろう
)
だ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主人側の男たちは
靉靆
(
あいたい
)
として笑った。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
靉
漢検1級
部首:⾬
25画
靆
漢検1級
部首:⾬
24画
“靉靆”で始まる語句
靉靆垂布
靉靆朦朧
靉靆模糊