ぐも)” の例文
そして、なつうみのかなたにかたむいて無数むすうのうろこぐもうつくしく花弁はなびらのようにそらりかかったときに、げてんだものもありました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほの赤い、朝暁あさあぐもを仰いで、蔵六は、頭が、くらくらとなった。——どんと、牢格子に背中をもたせかけて
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えきみぎると、もう心細こゝろぼそいほど、原野げんや荒漠こうばくとして、なんとも見馴みなれない、ちぎぐもが、大円だいゑんそらぶ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
往来の砂をかすめるばかり、板葺いたぶき檜皮葺ひわだぶきの屋根の向こうに、むらがっているひでりぐもも、さっきから、凝然と、金銀銅鉄をかしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
空一面を飛びはしちぎぐもはもう少しで月を、白銀の頭蓋骨を呑まうとして居る。
ありなしぐもとたゞよひて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
このくにには、むかしからのことわざがありまして、なつ晩方ばんがたうみうえにうろこぐものわいたに、うみなかげると、そのひとかいまれわる。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
さみだれぐも
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不思議ふしぎなことは、いまでもあの最後さいごた、うつくしい夕焼ゆうやぐも姿すがたが、ありありとのこっています。
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、三ねんもたつと、うみうえにうろこぐもがわいたに、そのかい白鳥はくちょうわってしまう。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)