雅致がち)” の例文
朝鮮ものの雅致がちについては今更述べるまでもなかろう。工藝品の美しさに対して、自然の力を残しておくことは何より肝心だと思える。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
武蔵野と云う旅館は今もあるが、二十年前とは持主が変っているそうで、あの時分のは建物も古くさく、雅致がちがあったように思う。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
郷土的な趣味や雅致がちあるものも、購買者が少なければ、製作者もこれに依って生活が出来ぬという経済的原因に支配されて、保存さるべきものが
土俗玩具の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
そのときの傷痕きずあとふるびてしまって、みきには、雅致がちくわわり、こまかにしげった緑色みどりいろは、ますます金色きんいろび、朝夕あさゆうきりにぬれて、疾風しっぷうすりながら
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
能面のおきなのような雅致がちのある顔つきの老人が、おだやかな口調でボツボツと話し合っている。
はん十一娘は※城ろくじょう祭酒さいしゅむすめであった。小さな時からきれいで、雅致がちのある姿をしていた。
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
其事物如何いか雅致がちある者なりとも、十七字に余りぬべき程の多量の意匠を十七字の中につづめん事は、ほとんし得べからざる者なれば、古来の俳人も皆之を試みざりしに似たり。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
てお話は二岐ふたみちに分れ、白金台町に間口はれ二十けんばかりで、生垣いけがきに成って居ります、門もちょっと屋根のある雅致がちこしらえで、うしろの方へまわると格子造りで、此方こちらは勝手口で
五華山ウーホワシャンを中心に、雅致がちのある黄色いへいや、緑のはりや、朱色の窓を持つ古風な家々を
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
百姓家とは違って、庭は綺麗きれいきよめられ、植木や飛び石の配置にも雅致がちがあった。私には無論、そうしたことの味わいはわからなかったのだが、ただ、何とはなしに「いいな」と思った。
しかも明石はなれなれしさの過ぎるほどにも出過ぎたことなどはせず、紫夫人はまた相手を軽蔑けいべつするようなことは少しもせずに怪しいほど雅致がちのある友情が聡明そうめいな二女性の間にかわされていた。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
玉蟲染たまむしぞめ天鵞絨びろうどのやうな薔薇ばらの花、あかの品格があつて、人のをさたる雅致がちがある玉蟲染たまむしぞめ天鵞絨びろうどのやうな薔薇ばらの花、成上なりあがりの姫たちが着る胴着どうぎ似而非えせ道徳家もはおりさうな衣服きもの僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
悲哀な湿りツぽい景色にまた何とも云へぬ雅致がちがある。
否、それでないと充分でない。なぜならこのような事情ばかりが、凡ての自然な雅致がちを保障するからである。
日田の皿山 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しかれども妾は左様には思わず、藪鶯は時と所を得て始めて雅致がちあるように聞ゆるなり、その声を論ずればいまだ美なりと云うからず、これに反して天鼓のごとき名鳥の囀るを聞けば
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わざとらしき釉、ひねくれた姿、人々はそれを雅致がちだと思い込むほど盲目になった。これを喜んで作る者が悪いのか、買う者が悪いのか、それとも注文する者が悪いのか。
北九州の窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)