鋼鉄こうてつ)” の例文
旧字:鋼鐵
そのとき中尉は、硬いひやりとしたものをてのひらの中に感じた。見るとそれは鋼鉄こうてつと硬質ゴムとでできた「火の玉」少尉の義手ぎしゅだったのである。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にわかにはちすずめがキイーンとせなかの鋼鉄こうてつほねもはじけたかと思うばかりするどいさけびをあげました。
「しかし、あなたとレールとは、もとおなじ一ではありませんか。兄弟きょうだいといってもいいでしょう。」と、はちは、おな鋼鉄こうてつでできていたから、そういったのです。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ローセンブームと青銅せいどうの人は、むかしの美しい木造船が一ばん気にいりました。新しい鋼鉄こうてつ軍艦ぐんかんのことは、このふたりにはあまりよくわからなかったようです。
巨獣は鋼鉄こうてつの皮でできているのかもしれない。いっこうに銃丸のとおったようすもない。ただ異様なたけりをあげると、巨大なからだをひとゆすりして、密林のなかへすがたをけした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
鋼鉄こうてつの如く日にけた皮膚と髯武者の揃っている中にあって、彼の顔だけが際立きわだって白かった。軍議の時など、藪の中に一輪の白椿が咲いているように、いつも口少なく秀吉の側にいた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひとりで歩く場合には鋼鉄こうてつのかぶとをかぶって歩く。中くらいの隕石ではあたってもこのかぶとでふせぐことができる」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時間じかんいくかいとなく、貨車かしゃや、客車きゃくしゃ往復おうふくするために、ねつはっし、はげしく震動しんどうする線路せんろでも、ある時間じかんは、きわめてしんとして、つめたく白光しろびかりのする鋼鉄こうてつおもて
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私たちは新らしい鋼鉄こうてつの三本ぐわ一本と、ものさしや新聞紙などをって出て行きました。海岸の入口に来てみますと水はひどくにごっていましたし、雨も少しりそうでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すてきに厚い最良質さいりょうしつのゴムの蒲団ふとんみたいなものじゃ。爆弾が上から落ちる。するとゴムの蒲団にもぐる。その間に爆弾の方向が鋼鉄こうてつの艦体に平行に曲る。
雨はポッシャンポッシャンっています。蜂雀はちすずめはそういながら、こうの方へび出しました。せなかやむね鋼鉄こうてつのはり金がはいっているせいかびようがなんだか少しへんでした。
そこで少年しょうねんは、ふくろなかからすなして、せっかくいたレールのうえりかけました。すると、るまにしろひかっていた鋼鉄こうてつのレールはにさびたようにえたのでありました……。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
百トン戦車かと思うような巨大な鋼鉄こうてつ怪車輌かいしゃりょうが数百台、博士の握るハンドル一つによって、電波操縦でギリギリと前進する。その怪車輌ががけにぶつかると、爆音をあげて崖はたちまち消えせる。
「何だ。火事か。えっ、鋼鉄こうてつづくりの戦車がひとりで焼けている?」
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すると、がちゃがちゃと金属のにぎやかな音がしたかと思うと、その豆戦車はばらばらになり、やがてそのこまごました部分品や鋼鉄こうてつがひとりでに集ってきて、三つのトランクと変ってしまった。
私が今、見ている機械は、しきりに原型げんけいをうち出している。原型は、普通は、かたい鋼鉄こうてつでつくるが、この地下工場では、私の知らない灰色のセメントのような妙な粉末をかしてかためるのであった。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なにしろ鋼鉄こうてつぼうひとつ残っていないありさまだった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)