酒場バー)” の例文
俺は常に酒場バーに入浸つてどうかして一刻でも此慾望から身を脱れようとした。が運命は決して此哀れむべき俺を哀れんで呉れなんだ。
悪魔の舌 (新字旧仮名) / 村山槐多(著)
しかし心斎橋筋へ出るつもりはなく、心斎橋筋の一つ手前の畳屋町筋へ出るまでの左側にスタンド酒場バーの「ダイス」があるのだった。
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「貴君、酒場バーへよく行くらしいから、知ってるかと思った……案外逸郎さんあたりが、どこかへ紹介したのじゃないかと思ったわ。」
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
どこにでも見かけるもの——OSAKEという広告サイン、と言っても、禁酒国だから酒場バーではない。「オサケ」は会社のこと。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
その中程にある酒場バーめいた店の硝子戸ガラスどが、暖かそうに内側から照らされているのを見つけた時、小林はすぐ立ちどまった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私たちの通されたのは、左手の薄黒いドアを開けて二つ目の部屋で、手前の部屋は酒場バーになっていた。
シェイクスピアの郷里 (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
酒場バーの前を過ぎて、時間表のかかげてある大時計のわきを通りかゝった時、泉原は群集の中に何ものかを見つけたと見えて、呻くような低い叫をあげてハタと足をとどめた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
あおつきひかりが、みずのようにうつくしく、はなやかな、にぎやかなまちのかわら屋根やねながれる、そのまちあるいて、そのは、めずらしいいしたかりつけたので、とある酒場バーにはいって
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてその一隅に酒場バーも設け、寝室も設備して、若い行員たちの土曜から日曜へかけての交歓場としたいのであったが、そのためには銀行は百七十万ペセタばかりのものを
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
上機嫌になつて、酒場バーの中で、おしやべりを始めだしますと、同じ酒場バーのお客さんたちは
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
都銀行の地下室、クラブと食堂と酒場バーと三つに仕切った、その中の食堂へ陣取ったのは、此処ここの長い常連で、身分は知らないが、互に顔も名も知り尽して居る十二三人の男女です。
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「六人の若い海賊」ホテルの、地下室の酒場バーもその頃から騒ぎが大きくなって来た。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがて一軒の酒場バーらしい戸口を見出して、野々宮は軽く扉を押してみた。扉の開く予想をもつてゐなかつたので、押した力は極めて弱いものだつたのだ。と。扉は然し開いたのである。
江戸趣味の喰い物店、又は渋い趣味のものを売るいろいろの店なぞが、次第に、ケバケバしい硝子ガラス瓶を並べた酒場バーやカフェー、毒々しい彩りを並べたショーウインドに追いまくられて行く。
銀座裏の酒場バー、サロンふねを出たときには、二人とも、ひどく酩酊めいていしていた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
威勢の悪い姫小松が五寸釘で磔になっている形ばかりの門松の下を潜って酒場バーの扉を引開けると、とたんにワッというひどい諸声とともに、高低様々に調子を外した童謡の合唱が聞こえてくる。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
普段から仕様のない呑んべえだったが、愈いよ沈むと判った時、既う無政府状態に開放された一等船客の酒場バーへ這入り込んで悠々と腰を据え、一期の思い出と許りに手当り次第に喇叭飲みを遣った。
運命のSOS (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
酒場バーの手管は、ネオンサイン
大阪を歩く (新字新仮名) / 直木三十五(著)
私新子さんを酒場バーになどご紹介するの、しからないと思いますから、証拠を掴んでおいて、たしなめてやりたいと思いますの。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
せんだっての晩手古摺てこずらされた酒場バーの光景を思い出さざるを得なくなった彼は、まゆをひそめると共に、相手を利用するのは今だという事に気がついた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ジョウジのように洋襟カラアをはずし、一ばんきたない服を着て聖ミシェルか Les Halles あたりの酒場バーから酒場を一晩うろついてみるか。これもBON!
それらの果物くだものうえにも、つきひかりちるときに、果物くだものは、はかないかおりをたてていました。また、酒場バーでは、いろいろの人々ひとびとあつまって、うたをうたったり、さけんだりしてわらっていました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
青木卓一に誘はれてエスパニヤ軒の酒場へ二三度でかけたのが、いはゆる酒場バーと名のつく場所へ出入した彼の経験の全部であつた。エスパニヤ軒は土地で最も高級な社交機関と言はれてゐる。
酒場バーの亭主や、酒場バーの娘さんは、不機嫌な顔をいたしました。そして
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
思い切って、『酒場バー』か『喫茶店』——この頃、銀座に流行はやっていますな——ああいうものを、やってみては如何いかがですか。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いやに小心だな。おおかた場末の酒場バーとここといっしょにされちゃたまらないという意味なんだろう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ざわめき、饒舌しゃべり、ののしりあい、大げさな表情と三角のひげがフェルトの上履きのままおもてを歩き、の明るい酒場バーから呶鳴るバリトンが洩れ、それにすがって金切り声フォルセットのソプラノが絡み
表通りの商店街は、どの都市にもそつくり見かけるあたりまへの商店建築が立ちならび、壁面よりも硝子ガラスの多い軽快な洋風商店、ビルディング、ネオンサイン、酒場バー、同じことだ。築港の完成。
用事もなさそうな男女なんにょがぞろぞろ動く中に、私は今日私といっしょに卒業したなにがしに会った。彼は私を無理やりにある酒場バーへ連れ込んだ。私はそこで麦酒ビールの泡のような彼の気燄きえんを聞かされた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)