部室へや)” の例文
遁げると見せかけ八蔵は遠くも走らず取って返し、裏手へ廻って墓所はかしょり、下枝がしたる部室へやの前に、忍んで様子をうかがえり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昨夜さくやも、一昨夜いつさくやも、夕食ゆふしよくてゝのち部室へやまど開放あけはなして、うみからおくすゞしきかぜかれながら、さま/″\の雜談ざつだんふけるのがれいであつた。
二人はいっしょの部室へやに住もうときめた。クリストフは半期分の部室代へやだいを無駄にするのも構わず、すぐに移り住もうとした。
二人は外套室クローク・ルウムに外套を置いて、かねて馴染の小ぢんまりした部室へやに入つて往つた。そして香気かをりの高いココアをすゝりながら、好きなお喋舌しやべりに語り耽つた。
居間ゐまにはもう電燈がいてゐた。代助は其所そこで、梅子と共に晩食ばんしよくました。子供二人ふたりたくを共にした。誠太郎にあに部室へやからマニラを一本つてさして、それかしながら、雑談をした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『やア、壁布の紛失した時も、その部室へやの窓から落としたじゃないか。』
くわふるに春枝夫人はるえふじん日出雄少年ひでをせうねん部室へやわたくし部室へやとは隣合となりあつてつたので萬事ばんじいて都合つがうからうとおもはるゝ。
おい、いい加減に巫山戯ふざけておけ。これ知るまいと思うても、先刻さっきちゃんとにらんでおいた、ここを這入って右側の突当つきあたり部室へやの中に匿蔵かくまってあろうがな。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は笑ひながら、又以前もと部室へやへ後戻りをした。手帳にどんな事が書きとめてあるかは記者わしも知らない。
部室へやの外が直ぐ森なので、風通しはうございますが、こんな時には、ちとどうも、と座敷の四隅に目を配りぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『それよりいそ新客しんきやく部室へや仕度したくをせよ、部室へや二階にかい第二號室だいにがうしつ——讀書室どくしよしつ片付かたづけて——。』と。
主人は墨汁壺インキつぼのやうな真つ暗な部室へやにもぐもぐしてゐたが、客が来たと気がつくと、のつそり立つて往つて、蝋燭にをつけた。蝋燭は黄疸わうだんみのやうな黄色い光りを四辺あたりに投げた。
山國やまぐにやまを、まちけて、戸外おもてよるいろは、部室へやうちからよくれる。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)