ばし)” の例文
風を切り、夜を裂き、大地にかんばしる音を刻んで、呪いの尽くる所まで走るなり。野を走り尽せば丘に走り、丘を走り下れば谷に走り入る。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「早飯、早陣、早ばしり」——何事も拙速を尊ぶのが戦国時代の生活法で、早陣というのは陣立てするのに神速を尊ぶことである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ばしつた人づきあひのい細君は「しかし日本から詩人として巴里パリイへ来たのはお前さんが初めてだ」などとお世辞を言ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
腕力自慢の衣水いすい韋駄天いだてん走り、遥か遅れて髯将軍、羅漢らかん将軍の未醒みせい子と前後を争っていたが、七、八町に駆けるうちに、衣水子ははや凹垂へこたれてヒョロヒョロばしり、四
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
左樣さやうならとてかしらさげげるに、あれいちやんの現金げんきんな、うおおくりはりませぬとかえ、そんならわたし京町きやうまち買物かいものしましよ、とちよこ/\ばしりに長屋ながや細道ほそみちむに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一体にがばしりて眼尻めじりにたるみ無く、一の字口の少しおおきなるもきっとしまりたるにかえって男らしく、娘にはいかがなれど浮世うきよ鹹味からみめて来た女にはかるべきところある肌合はだあいなリ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
にがばしった、芝居ですると定九郎といったような人相で、あれよりずっとせた人柄、病み上りのように蒼白あおじろい、なんでも人の言うところによると、眼が不自由であったと申しますが
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そそばしりゆく霜月しもつきや、專修念佛せんじゆねぶち行者ぎやうじやらが
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
すはとはゞいのちがけのつとめに遊山ゆさんらしくゆるもをかし、むすめ大籬おほまがき下新造したしんぞとやら、七けん何屋なにや客廻きやくまわしとやら、提燈かんばんさげてちよこちよこばしりの修業しゆげう卒業そつげうしてなににかなる
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そそばしりゆく乾反葉ひたりば
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)