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貴君樣
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あなたさま
竊に話し
私しにも
昨日一
服遣して
貴君樣の食事に入れて
呉よと
頼み候と彼藥を見せければ
又七
委細を
赤尾の
彦が
息子のやうに
氣ちがひに
成つて
歸つたも
見て
居り候へば、もと/\
利發の
貴君樣に
其氣づかひはあるまじきなれど、
放蕩ものにでもお
成りなされては
取返しがつき申さず
筋のなきわからずやを
仰せいだされ、
足もとから
鳥の
立つやうにお
急きたてなさるには
大閉口に候、
此中より
頻に
貴君樣を
御手もとへお
呼び
寄せなさり
度、一日も
早く
家督相續あそばさせ
呼掛る者あり誰ぞと
振返り見れば古河に
在し
際召使ひし喜八と云ふ者にて吉之助が
側に來り
貴君樣には何時御當地へ
御出有しや
途中ながら
御容子伺ひ
度と申けるに此所は
人立繁ければとて
傍邊の茶屋に
伴ひ吉之助は
諸藝稽古の爲め横山町の
出店へ來りしより多くの金を
樂隱居なされ
度おのぞみのよし、これ
然るべき
事と
御親類一
同の
御决義、
私は
初手から
貴君樣を
東京へお
出し申すは
氣に
喰はぬほどにて、申しては
失禮なれどいさゝかの
學問など
何うでも
宜い
事
さし置てお光は
家主長助方へ赴き
貴君樣に
折入て
密々御願ひ申度一大事の出來候まゝ
態々參りしなり併し乍ら
人樣の前にては申し上難きことなれば
何卒内々にて
御相談願ひ上度と
言により長助は如何にも承知なりとて
早速自身の家内に向ひ其方は
何方なりとも少しの
間だ
行てを