話頭はなし)” の例文
『それは舞踏ぶたう第一だいいち姿勢しせいだわ』とつたものゝあいちやんは、まつた當惑たうわくしたので、しきりに話頭はなしへやうとしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
茶が出てから、三人は別の話頭はなしに移つた。奥様は旅先の住職のうはさなぞを始めて、客の心を慰める。子坊主は隣の部屋の柱にもたれて、独りで舟を漕いで居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
話頭はなし岐路わきみちに入ったようであるが、自分の胸中に正しからざる種子たね潜伏せんぷくする以上は、いかに最初は勇敢なるも、いかに初対面のときに豪傑風を装うとも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
話頭はなしを変えてみたが、依然として返事をしない。眼をいて鏡の中を見ると、真青になったまま、ばばあじみた、泣きそうな笑い顔をしいしい首を縮めて鋏を使っている。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なんという話頭はなしの変り方であろう。しかしその言葉には、なんとも言われぬ痛々しさがあります。
あちらにゆる遠景えんけい丁度ちょうど油壺あぶらつぼ附近ふきんりますので、うっかり話頭はなし籠城時代ろうじょうじだいことむかいますと、良人おっと様子ようすきゅうしずんで、さも口惜くやしいとったような表情ひょうじょううかべるのでした。
話頭はなしかはりて爰に松田の若黨わかたう吾助は主人喜内を討果うちはたしてかねての鬱憤うつぷんを散じ衣類一包みと金子二百兩を盜み取やみに紛れて備前國岡山を立去しが豐前國ぶぜんのくに小倉こくらの城下に少しの知音ちいん有ければ此に便りて暫く身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だから吾儕われ/\も頭を痛めて居るのさ。まあ、聞き給へ。ある人は又た斯ういふことを言出した。瀬川君に穢多の話を持掛けると、必ず話頭はなしわきそらして了ふ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
はしなくも話頭はなしがみずから犯した罪に、すこしでも触れると、すぐにビクつき、あるいは顔色かおいろが変わり、あるいは声がふるえ、あるいはその言うことに辻褄つじつまが合わなくなり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
吾輩は又、話頭はなしを変えた。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
和尚は話頭はなしを進めて
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と何気なく言消して、丑松は故意わざ話頭はなしを変へてしまつた。下宿の出来事は烈しく胸の中を騒がせる。それを聞かれたり、話したりすることは、何となく心に恐しい。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あるいはごく上等に出来たとしても、話頭はなし漸々ぜんぜんげて自分の痛いところより遠く離さんとし、然らざれば正反対に自分の弱点を弁護するごとき議論や物語をしたりする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
西は話頭はなしを変えようとした。で、こんな風に言ってみた。「男が働くというのも、考えてみれば馬鹿々々しいサ。畢竟つまり、自然の要求というものは繁殖に過ぎないのだ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おとっさん」と言い、義理ある弟へ話しかけるにも「宗太君、宗太君」と言って、地方のことが話頭はなしに上れば長崎まで英語を修めに行ったずっと年少としわかなころの話もするし
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)