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裏返
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うらがへ
『だが、
趾の
事だらうね?』と
海龜が
念を
押しました。
何うして
鼻で
其れを
裏返すことが
出來たかえ?』
譬へば
城ヶ
沼を
裏返して、
空へ
漲らした
夜の
色——
寝をびれて
戸惑ひをしたやうな
肥つた
月が、
田の
水にも
映らず、
山の
姿も
照らさず……
然うかと
言つて
並木の
松に
隠れもせず
「
面目もござりません。」と
手拭を
笠に
落して、
裏返しに
膝へ
下げた、
腰を
屈めて
帶しめ
鈕かけ
身を
固め、
趾殘らず
裏返す。
葛籠の
蓋を
取つたり、
着換の
綻を
檢べたり、……
洗つた
足袋を
裏返したり、
女中を
買ものに
出したり、
何か
小氣轉に
立𢌞つて
居たと
思ふと、
晩酌に
乾もので
一合つけた
時、
甚だ
其の
見事でない