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荷船
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にぶね
ふりがな文庫
“
荷船
(
にぶね
)” の例文
夕焼
(
ゆうやけ
)
の空は堀割に臨む白い
土蔵
(
どぞう
)
の壁に反射し、あるいは夕風を
孕
(
はら
)
んで進む
荷船
(
にぶね
)
の帆を染めて、ここにもまた意外なる美観をつくる。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
どの
運河
(
カナル
)
の水も鏡のやうに明るくて
井
(
ゐど
)
のやうに深く、
其
(
その
)
上に黄いろく
染
(
そ
)
んだ並木や、
淡紅
(
うすあか
)
く塗つた家の壁や、いろいろに
彩
(
いろど
)
つた
荷船
(
にぶね
)
やが静かに映つて居るのを見ると
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
忽
(
たちま
)
ち
燈
(
ともしび
)
の光の消えて行くようにあたりは全体に薄暗く灰色に変色して来て、満ち来る
夕汐
(
ゆうしお
)
の上を滑って行く
荷船
(
にぶね
)
の帆のみが真白く
際立
(
きわだ
)
った。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
忽
(
たちま
)
ち
燈
(
ともしび
)
の光の消えて
行
(
ゆ
)
くやうにあたりは全体に
薄暗
(
うすぐら
)
く灰色に
変色
(
へんしよく
)
して来て、満ち
来
(
く
)
る
夕汐
(
ゆふしほ
)
の上を
滑
(
すべ
)
つて
行
(
ゆ
)
く
荷船
(
にぶね
)
の
帆
(
ほ
)
のみが
真白
(
まつしろ
)
く
際立
(
きはだ
)
つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
一しきり
渡場
(
わたしば
)
へ急ぐ人の
往来
(
ゆきゝ
)
も今では
殆
(
ほとん
)
ど絶え、橋の下に
夜泊
(
よどま
)
りする
荷船
(
にぶね
)
の
燈火
(
ともしび
)
が
慶養寺
(
けいやうじ
)
の高い
木立
(
こだち
)
を
倒
(
さかさ
)
に映した
山谷堀
(
さんやぼり
)
の水に美しく流れた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
河の
面
(
おもて
)
は悲しく灰色に光っていて、冬の日の終りを急がす水蒸気は対岸の堤をおぼろに
霞
(
かす
)
めている。
荷船
(
にぶね
)
の帆の間をば
鴎
(
かもめ
)
が幾羽となく飛び
交
(
ちが
)
う。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
河
(
かは
)
の
面
(
おもて
)
は悲しく灰色に光つてゐて、冬の日の
終
(
をは
)
りを急がす
水蒸気
(
すゐじようき
)
は対岸の
堤
(
つゝみ
)
をおぼろに
霞
(
かす
)
めてゐる。
荷船
(
にぶね
)
の
帆
(
ほ
)
の
間
(
あひだ
)
をば
鴎
(
かもめ
)
が
幾羽
(
いくは
)
となく飛び
交
(
ちが
)
ふ。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
水際には古雅な形の
石燈籠
(
いしどうろう
)
が立っていたが、今は石炭を積んだ
荷船
(
にぶね
)
が
幾艘
(
いくそう
)
となく
繋
(
つなが
)
れているばかり
水のながれ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
荷船
(
にぶね
)
や
肥料船
(
こえぶね
)
の
笘
(
とま
)
が貧家の屋根よりもかえって高く見える間からふと
彼方
(
かなた
)
に
巍然
(
ぎぜん
)
として
聳
(
そび
)
ゆる寺院の屋根を望み見る時、しばしば
黙阿弥
(
もくあみ
)
劇中の背景を想い起すのである。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
夏の
夕
(
ゆうべ
)
、海の上に月の昇る頃はひろびろした閑地の雑草は一望煙の如くかすみ渡って、
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
に通ずる堀割から
荷船
(
にぶね
)
の帆柱が見える景色なぞまんざら捨てたものではない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今まで
荷船
(
にぶね
)
の
輻湊
(
ふくそう
)
した狭い堀割の光景に馴らされていた眼には、突然濁った黄いろの河水が、岸の見えない低地の蘆をしたしつつ、満々として四方にひろがっているのを見ると
放水路
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
このあたりまで来ると、運河の水もいくらか澄んでいて、
荷船
(
にぶね
)
の往来もはげしからず、橋の上を走り過るトラックも少く、水陸いずこを見ても目に入るものは材木と鉄管ばかり。
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
油紙で張った雨傘に
門
(
かど
)
の
時雨
(
しぐれ
)
のはらはらと降りかかる
響
(
ひびき
)
。夕月をかすめて
啼過
(
なきすぐ
)
る
雁
(
かり
)
の声。
短夜
(
みじかよ
)
の夢にふと聞く
時鳥
(
ほととぎす
)
の声。雨の夕方
渡場
(
わたしば
)
の船を呼ぶ人の声。
夜網
(
よあみ
)
を投込む水音。
荷船
(
にぶね
)
の
舵
(
かじ
)
の響。
虫の声
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
荷船
(
にぶね
)
にもなびく
幟
(
のぼり
)
や
小網河岸
(
こあみがし
)
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
荷
常用漢字
小3
部首:⾋
10画
船
常用漢字
小2
部首:⾈
11画
“荷”で始まる語句
荷
荷物
荷車
荷担
荷足
荷梱
荷駄
荷拵
荷厄介
荷馬車