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笘
すると丁度隣の土蔵が塗直しで足場が掛けてあって
笘が掛っているから、それを
潜って段々参ると、下の方ではワア/\と云う
人声、もう
然うなると
荷船や
肥料船の
笘が貧家の屋根よりもかえって高く見える間からふと
彼方に
巍然として
聳ゆる寺院の屋根を望み見る時、しばしば
黙阿弥劇中の背景を想い起すのである。
申さるゝものかな我あの朝は
斯樣々々の用事にてと云はんとすれば伊藤は
打消默れ傳吉汝何程
僞りでも
淨玻璃の
鏡に掛て見るが如く
己が罪は知れてあり然らば
拷問に
掛て云はして見せんと
笘を