トップ
>
繊手
>
せんしゅ
ふりがな文庫
“
繊手
(
せんしゅ
)” の例文
旧字:
纖手
こんな深刻味のあるものを一女性の
繊手
(
せんしゅ
)
に
委
(
まか
)
せて
夫子
(
ふうし
)
自らは別の境地に収まっている。鴎外はなぜそんな態度を取っているのだろう。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「あ痛ッ。よろしい。あなたはその美しい
繊手
(
せんしゅ
)
で、
麿
(
まろ
)
の頬を打った。麿も暴力をもって報いますよ。火のごとき愛情の暴力で」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、僕は、壁に釘をうつ美しい夫人の
繊手
(
せんしゅ
)
を見上げながら声をかけた。額の中の絵は、ボナースの水彩画で、スコットランドあたりの放牧風景の絵であった。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あの美しい
女形
(
おやま
)
が、浪路に対して、どのような
籠絡
(
ろうらく
)
の
繊手
(
せんしゅ
)
を伸ばしつつあるかをさえ耳にしているのである。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「躊躇はご無用
妾
(
わたし
)
を殺して、陣十郎をお討取り下さりませ。……まずこの如く!」と
繊手
(
せんしゅ
)
を揮った。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
盃
(
さかずき
)
持つ
妓女
(
ぎじょ
)
が
繊手
(
せんしゅ
)
は女学生が体操仕込の腕力なければ、
朝夕
(
あさゆう
)
の掃除に主人が
愛玩
(
あいがん
)
の
什器
(
じゅうき
)
を
損
(
そこな
)
はず、
縁先
(
えんさき
)
の盆栽も
裾袂
(
すそたもと
)
に枝
引折
(
ひきお
)
らるる
虞
(
おそれ
)
なかりき。世の中
一度
(
いちど
)
に二つよき事はなし。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
瞼
(
まぶた
)
の切れの上品な彼女は、もう、落ちつきを取戻してお
計
(
はから
)
い何ともおん礼の申しようもございませぬといった。
繊手
(
せんしゅ
)
のかがやきは貝ノ馬介のむねに、まだ名ごりを眼の内にとどめた。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その背部には光る刃を持った
繊手
(
せんしゅ
)
が静かに静かに振り上げられて行く。ルパンは女の血に餓えた凄まじい眼光が火の出る様に短刀を突き刺すべき
頸
(
くび
)
の
辺
(
あたり
)
にそそがれているのを知った。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
女性の
繊手
(
せんしゅ
)
を握ってしまった事も無かったし、いわんや、「ふとした事」から異性と一体になろうとあがく特殊なる性的煩悶、などという壮烈な経験は、私には
未
(
いま
)
だかつて無いのである。
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
端厳微妙
(
たんげんみみょう
)
のおんかおばせ、雲の袖、霞の
袴
(
はかま
)
ちらちらと
瓔珞
(
ようらく
)
をかけたまいたる、玉なす胸に
繊手
(
せんしゅ
)
を添えて、ひたと、おさなごを
抱
(
いだ
)
きたまえるが、仰ぐ仰ぐ瞳うごきて、ほほえみたまうと、見たる時
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
崔を救った女も一種の女侠であることは、美人の
繊手
(
せんしゅ
)
で捕吏ふたりを投げ倒したのや、役人の枕もとへ忍び込んで短剣と手紙を置いて来たのや、それらの活動をみても容易に想像されるではないか。
女侠伝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼女ははじめて目覚めて、鉄のように堅く冷たい重い壁を
繊手
(
せんしゅ
)
をのべて
打叩
(
うちたた
)
いて見た。そしてその反響は冷然と響きわたり、勝手にしろと
吼
(
ほ
)
えた。そのおりには、もう彼女の住む広い胸はなかった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
春琴の
繊手
(
せんしゅ
)
が
佶屈
(
きっくつ
)
した老梅の幹をしきりに
撫
(
な
)
で廻す様子を見るや「ああ梅の
樹
(
き
)
が
羨
(
うらやま
)
しい」と一幇間が
奇声
(
きせい
)
を発したすると今一人の幇間が春琴の前に立ち
塞
(
ふさ
)
がり「わたい梅の樹だっせ」と
道化
(
どうけ
)
た
恰好
(
かっこう
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まばゆげな
紅
(
くれない
)
をたたえ、遠くからそっと、真白な
繊手
(
せんしゅ
)
へ、
翡翠
(
ひすい
)
の杯をのせて、聞きとれないほどな小声でいった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つまり、君尾がひどく不機嫌になり、ピチャピチャ三吉をたたくからである。女の
繊手
(
せんしゅ
)
というものは、どうしてどうして馬鹿にはならない。これでたたかれると随分痛い。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そういう
手工
(
しゅこう
)
にも姉は器用であった。あの鹿鳴館に貴婦人たちが集って、井上外交の華やかさを、その
繊手
(
せんしゅ
)
と
嬌笑
(
きょうしょう
)
とをもって飾った時代である。有名なのは夜会の舞踏であった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
八重
日々
(
にちにち
)
菜園に出で
繊手
(
せんしゅ
)
よくこれを
摘
(
つ
)
み調味してわが日頃好みて集めたる
器
(
うつわ
)
に盛りぬ。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
身の
迅
(
はや
)
さは浪をかすめる
燕
(
つばくろ
)
のようである。また、白雪の
屑
(
くず
)
がひらめく風と戦っているようなものだ。そしてうかとすればすぐ
繊手
(
せんしゅ
)
の二刀が斬りこんでくる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
淀
(
よど
)
の遊君亀千代の
繊手
(
せんしゅ
)
を、爪のもとまで毛の生えている、熊のような手でグッと握り、奥へしょびいて行こうとするのを、同じ路からやって来たところの、
狩野
(
かの
)
彦七郎左衛門ノ
尉
(
じょう
)
が
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それとは反対に、まんまと
繊手
(
せんしゅ
)
の術中におとされた深見重左は、
憤恚
(
ふんい
)
の形相を黒装束の者どもに向けて
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
踏まえた
宝鐙
(
あぶみ
)
には、珠をちらし、着たるは
紅紗
(
こうさ
)
の
袍
(
ほう
)
で、下に銀の
鎖
(
くさり
)
かたびらを重ね、
繍
(
ぬい
)
の帯、そしてその
繊手
(
せんしゅ
)
は、馬上、右と左とに、抜き払った日月の
双刀
(
そうとう
)
を持っているのであった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とくに高時の前では、日ごろの
猛者
(
もさ
)
や大名が、彼女たちの
繊手
(
せんしゅ
)
にかかると手も足も出ない有様を見て高時がよろこぶとこから、自然、鎌倉の妓ほど、東国武人を手玉にとり馴れているものはなかった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“繊手”の意味
《名詞》
か細くしなやかな手。
(出典:Wiktionary)
繊
常用漢字
中学
部首:⽷
17画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“繊手”で始まる語句
繊手一閃