竜頭りゅうず)” の例文
旧字:龍頭
巻軸になった竜頭りゅうずは六分、これは定法じょうほうです、毛の様に伸びた穂は、四寸あまり、それを右手につまみ上げると、穂先を左の指の腹で軽く撫でて見ます。
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
竜頭りゅうずの滝を見て、戦場ヶ原の入口にりし時は、雨ようやく晴れて、額が痛くなるほど黒髪山くろかみやまが頭上にのぞいている。強風は例によって猛烈に吹く。
そして懐中時計を三十分に一度はきっと出して、ただ眺める。竜頭りゅうずをいじって耳へもってゆくしぐさを繰返す——
信玄の嫡子、太郎義信は時に二十四歳、武田菱の金具竜頭りゅうずの兜を冠り、紫裾濃すそごの鎧を着、青毛の駿馬に跨って旗本をたすけて、奮戦したことは有名である。
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
手下のかずも五十人はくだるまいというンですが、どうして伏鐘というかというと、まだ若いころ芝の青松寺せいしょうじ鐘楼しょうろう竜頭りゅうずがこわれて鐘が落ちたことがある。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
新田義興にったよしおきという大将が殺された矢口ノ渡しでは、どうかすると馬のひづめの足音が不意に聞えて、竜頭りゅうずかぶとをかぶった大将の姿が現われるということを聞きました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
緋縅ひおどし大鎧おおよろいて、竜頭りゅうず金鍬形きんくわがたの付いたかぶとをかぶって、連銭葦毛れんせんあしげの馬に乗った美しい若武者が迎えに来る、光り耀かがやくような若い大将が、それがお登女の花婿である。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あいつは十五分すすんでいるな。」それから腕時計の竜頭りゅうずを引っぱってはりなおそうとしました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
既にして巨鐘きょしょう水にあり。晃、お百合と二人、晃は、竜頭りゅうず頬杖ほおづえつき、お百合は下に、水にもすそをひいて、うしろに反らして手を支き、打仰いで、じっと顔を見合せ莞爾にっこりと笑む。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竜頭りゅうずの方は薄暗さの中に入っている一種の物〻ものものしさを示して寂寞じゃくまくかかっていた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夏草なつくさやつわものどもが、という芭蕉ばしょうの碑が古塚ふるづかの上に立って、そのうしろに藤原氏ふじわらし三代栄華の時、竜頭りゅうずの船をうかべ、管絃かんげんの袖をひるがえし、みめよき女たちがくれないはかまで渡った、朱欄干しゅらんかん
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(不器用千万なる身ぶりにて不状ぶざまに踊りながら、白拍子のむくろを引跨ひんまたぎ、飛越え、刎越はねこえ、踊る)おもえばこの鐘うらめしやと、竜頭りゅうずに手を掛け飛ぶぞと見えしが、ひっかついでぞ
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……其処そこ屋根囲やねがこいした、おおいなる石の御手洗みたらしがあつて、青き竜頭りゅうずからたたへた水は、つすら/\と玉を乱して、さっすだれ噴溢ふきあふれる。其手水鉢そのちょうずばち周囲まわりに、ただ一人……其の稚児ちごが居たのであつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……そこに屋根囲やねがこいした、おおいなる石の御手洗みたらしがあって、青き竜頭りゅうずからたたえた水は、且つすらすらと玉を乱して、さっすだれ噴溢ふきあふれる。その手水鉢ちょうずばち周囲まわりに、ただ一人……その稚児が居たのであった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鐘は高く竜頭りゅうずに薄霧をいてかかった。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)