窓下まどした)” の例文
昨日までは彼方あちら窓下まどした此方こちらの室の隅へ日を避けて、濡手拭で汗を拭き拭き筆を執つて居たが、今日は涼しい代りに何の室も戸が開けられない。
台風 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
成程小さい——が、折角のこころざしを無にするも何だから、借りて置く事にして、礼をいって窓下まどしたに据えると、雪江さんが、それよか入口の方が明るくッて好かろうという。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
地上ちじやうなが影法師かげばふし心細こゝろぼそげにんでく、いつしか傘屋かさや路次ろじつておきやうれい窓下まどしたてば、此處こゝをば毎夜まいよおとづれてれたのなれど、明日あすばんはもうおまへこゑかれない
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
突然とつぜん雨戸あまどたおしたようなおおきなおと窓下まどしたきこえたが、それでも薬罐やかんなかめられた春重はるしげながかおはただそのまゆ阿波人形あわにんぎょうのように、おおきくうごいただけで、けっしてよこにはけられなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
土屋様の下屋敷の長屋下を御詠歌を唄って、ひょっとして窓から報謝をと首を出す者が又市で有ったら何ういたそうと、八方へまなこを着けて窓下まどしたを歩くと、十月十五日の小春凪こはるなぎあったかいのに
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
不治ふちの患者の窓下まどしたに起る樂隊のおと
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
えざる窓下まどしたのあたりより
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
れにかまはずくちびるめて、まあお聞遊きゝあそばせ、千葉ちば其子そのこ見初みそめましてからのことあさ學校がくかうゆきまするときかなら其家そこ窓下まどしたぎて、こゑがするか、つたか、たい、きゝたい、はなしたい
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)