稼人かせぎにん)” の例文
こっちへ追われ逃げ場をなくして松の木へ飛び付きやっと呼吸いきを吐いたなんて、へ、それでも稼人かせぎにんけえ? 鼠小僧もたがが弛んだな。
善悪両面鼠小僧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、同宿のほかのてあいのように、土方どかただとか車力だとかいうような力業ちからわざでなく、骨も折れずにいい金を取って、年の若いのに一番稼人かせぎにんだと言われている。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
亥太郎には七十に近い親父おやじがあると云う事が分り、義のある男ですからうか親父を助けてやりたい、稼人かせぎにんが牢へき老体の身で殊に病気だと云うからさぞ困るだろう
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「なに、届かないものか。紺足袋を穿いている処を見ても、稼人かせぎにんだということは分かる」と云う。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
不意ふいゆきひますると、時節じせつるまで何方どちらへもられぬことになりますから、わたくし稼人かせぎにんうちに四五にんかゝへてります、まんひとつも、もし、やうなひますると
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「春吉あ、菊も、いい稼人かせぎにんになったぞ。今朝刈った草なんか、一人めえ以上だぞ、ありゃ。」
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
親父おやぢといふは煙管パイプ旋盤細工ろくろざいくげふとして居るもので、とりく時から日のくれるまで旋盤ろくろまへうごいたことのない程の、ブリダアまちではめづらしい稼人かせぎにんであるから、兒童こどもところ承知しようちするはずもない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ほんとに何ですのほゝゝゝあなたなんぞは稼人かせぎにんですからだが、私なんかには焼芋を買っても、一番冷たくなったお尻の方で無くてはいけませんの、あれでお金を溜めたってね
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まへさんは稼人かせぎにんだ、いそがしからう、此處こゝいよ。いゝえ遠慮ゑんりよをするんぢやない。はじめからさかくるまからりるつもりではひつたんだ。ともさんとれて、れでるのをすんぢやないから。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
身上みあがりをしたり、聞けば他で以て高利を借りて、それも是れもまア稼人かせぎにんのこったから私は何にも云いませんけれども、考えて御覧なさい、私はぎょくをいくら取りそこなったか知れやしない
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)