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かくしゃく
ふりがな文庫
“
矍鑠
(
かくしゃく
)” の例文
老人の足は
矍鑠
(
かくしゃく
)
たるものだったが、それでも三人の足にくらべるとさすがにのろかった。しかし、滝までは三十分とはかからなかった。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
菊池五山もまた
矍鑠
(
かくしゃく
)
として数年前にはその詩話の補遺四巻を上木し、連月十六日を期して詩会を
本郷
(
ほんごう
)
一丁目の邸宅に開いていた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
十二歳年下で、六十歳の太田
南畝
(
なんぽ
)
がまだ
矍鑠
(
かくしゃく
)
としてゐるのが気になつた。この男には、とても生き越せさうにも思へなかつた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
とって六十八にもなる兼良のことを、今さら老けたとは妙な
言艸
(
いいぐさ
)
だが、事実この
矍鑠
(
かくしゃく
)
たる老人は、近年めだって年をとった。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
越していますよ。
矍鑠
(
かくしゃく
)
というのは昔の支那人が家の社長の為めに拵えて置いた言葉かも知れません。頭はあの通りツル/\でも、精力は壮者を
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
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今度のアメリカ訪問で、一番印象に残ったのは、老人が沢山いて、それが皆
矍鑠
(
かくしゃく
)
として、元気で働いていることであった。
老齢学:――長生きをする学問の存在――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
セミョーンは六十ほどの老爺で、痩せて歯はもう一本もないが、肩幅が広くて一見まだ
矍鑠
(
かくしゃく
)
としている。彼は酔っていた。
追放されて
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
恐らくこれは、これもまた
矍鑠
(
かくしゃく
)
としているであろう気丈な彼の老妻が、困苦のなかにいよいよ澄んだ配慮を物語っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そうして自分の青年時代に八十余歳でなくなるまでやはり同じようなおばあさんのままで
矍鑠
(
かくしゃく
)
としていたB家の
伯母
(
おば
)
は
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
あなたのように
齢
(
よわい
)
八十になん/\としてなお
矍鑠
(
かくしゃく
)
たる元気を保ち、壮者を
凌
(
しの
)
ぐ趣がおありになるのは羨しい次第である。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
番台の下に
矍鑠
(
かくしゃく
)
たるお婆さんが一人、突立ってこちらを見ているのに気がついて、急に大きな頭を一つ、がくりと下げ
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
頽然たる老人である可きであったが、名に負う海洋で鍛えた体は
矍鑠
(
かくしゃく
)
として尚逞しく、上下の歯など大方揃っていた。
赤格子九郎右衛門
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
77歳の高齢をもって、いまなお
矍鑠
(
かくしゃく
)
として、町民の診療にあたっている氏のためにも、今度の町のもよおしは、ほんとうに心あたたまる朗報である。
生きているコタンの銅像:――アイヌの慈父・高橋房次――
(新字新仮名)
/
知里真志保
(著)
矍鑠
(
かくしゃく
)
として、甚だ陽気だ。人を見れば話しかけて、笑ひさざめき、座敷に酒宴が始まれば給仕のついでに踊つてみせる。秋山家の
主
(
ぬし
)
のやうなものである。
木々の精、谷の精
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
七十代の
婿
(
むこ
)
と八十代の
舅
(
しゅうと
)
とは、共に
矍鑠
(
かくしゃく
)
として潮風に
禿頭
(
はげあたま
)
を黒く染め、朝は早くから夜は
手許
(
てもと
)
の暗くなるまで庭仕事を励んだ。二人ともに、何が——と。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
爾来
(
じらい
)
、それを続けて現在屈指の大茶人として認識されるに至っている、今日、七十七歳で
矍鑠
(
かくしゃく
)
と好者生活を続ける根津さんは通常一片の美的趣味家ではない。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
齢
(
よわい
)
は五十を
超
(
こ
)
えたるなるべけれど
矍鑠
(
かくしゃく
)
としてほとんと
伏波将軍
(
ふくはしょうぐん
)
の
気概
(
きがい
)
あり、これより
千島
(
ちしま
)
に行かんとなり。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
O氏は日露戦役の志士沖禎介氏のお父さんで、肥前は有田の弁護士である。もう六十を越えて、それで
前額
(
まえびたい
)
は禿げているが、
矍鑠
(
かくしゃく
)
としたシャンとした老人である。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかしその
矍鑠
(
かくしゃく
)
とした気力と、つやつやしい顔の輝きとの少しも変わらないのにはまったく驚きますよ。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
要橋
(
かなめばし
)
ぎわの
吉永町
(
よしながちょう
)
に大きな家を構えて住んでいる木場の甚は、七十あまりの老人だが、
矍鑠
(
かくしゃく
)
として、みがき抜いた長
火鉢
(
ひばち
)
のまえで、銀の伸べ
煙管
(
きせる
)
でたばこをのんでいた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
矍鑠
(
かくしゃく
)
と持前の生命力をてかてかと顔じゅうに光らせて来たかの如く見うけられた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「達者じゃ、
矍鑠
(
かくしゃく
)
としちょる。沼之上へ帰ったら皆の者によろしく伝えてくれ」
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
同学の諸士は私よりは年下だのに早くも死んだ人が少なくないに拘わらず、われは尚心身
矍鑠
(
かくしゃく
)
たる幸福を
贏
(
か
)
ち得ているからこの達者なうちに一心不乱働かねば相済まぬことと確信している。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
が、しかし、父の代から勤めて、父の死ぬ時には懇々私の
輔佐
(
ほさ
)
を頼まれ老いてもなお
矍鑠
(
かくしゃく
)
として銀行の業務一切を取り仕切っているこの老人に向っては、真っ向から反対するわけにもいかず
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
彼は七十五歳の高齢にもかかわらず、なお
矍鑠
(
かくしゃく
)
として世界の楽壇に雄飛していることは、真に驚くべきで、今日専ら自由な立場にあって、いろいろな楽団に棒を振っているのも一つの魅力である。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
矍鑠
(
かくしゃく
)
の感じがまだそこらに残っていた。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
矍鑠
(
かくしゃく
)
とした姿を見てくれ給え
手
(新字新仮名)
/
今村恒夫
(著)
とつて六十八にもなる兼良のことを、今さら老けたとは妙な
言艸
(
いいぐさ
)
だが、事実この
矍鑠
(
かくしゃく
)
たる老人は、近年めだつて年をとつた。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
しかし、今の返答ぶりで見ると与八は、この
矍鑠
(
かくしゃく
)
たるお婆さんから、自分の人相がいいといって感心されたことをお感じがなかったようにも見える。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「刈田伝二・行年七十二」彼はさういふ墓の下へ、昔は一しきり足繁く往来し合つた一人の老人——今も尚
矍鑠
(
かくしゃく
)
として死ぬ色もない漁色家の老いたる友を埋めてしまつた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
五分刈
(
ごぶがり
)
の頭髪は太い眉毛や
口髭
(
くちひげ
)
と共に雪のように白くなっているので、血色のいい顔色はなお更
赧
(
あか
)
らみ、
痩
(
や
)
せた小づくりの
身体
(
からだ
)
は年と共にますます
矍鑠
(
かくしゃく
)
としているように見える。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
数馬の属する部落における組頭の名は藤作と云って六十に近い老人であったがさすがに昔は
武士
(
さむらい
)
であっただけに
矍鑠
(
かくしゃく
)
として壮者を
凌
(
しの
)
ぎ、しかも主君に対しては誠忠無類の人物であった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかし
矍鑠
(
かくしゃく
)
たるものだ。池の
主
(
ぬし
)
というからには、国家なら王様だろう
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
年は取ってもあの
矍鑠
(
かくしゃく
)
たる容貌に何の変りもなかった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
憎
(
にく
)
らしいほど、
矍鑠
(
かくしゃく
)
としたものだ。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今日その人はなお
矍鑠
(
かくしゃく
)
としておられるが、その人の日夜見て
娯
(
たのし
)
みとなした風景は既に亡びて存在していない。先生の名著『
讕言
(
らんげん
)
長語』の二巻は明治三十二、三年の頃に公刊せられた。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「いや
矍鑠
(
かくしゃく
)
たるものだぜ。僕なんか
迚
(
とて
)
も
敵
(
かな
)
わない」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
矍
漢検1級
部首:⽬
20画
鑠
漢検1級
部首:⾦
23画
“矍”で始まる語句
矍然
矍麦