白波しらなみ)” の例文
春は水嵩みずかさゆたかで、両岸に咲く一重桜の花の反映の薄べに色に淵はんでも、瀬々の白波しらなみはます/\えて、こまかい荒波を立てゝゐる。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
丁余ちょうよの上流では白波しらなみの瀬をなして騒いだ石狩川も、こゝでは深い青黝あおぐろい色をなして、其処そこ此処に小さなうずを巻き/\彼吊橋の下を音もなく流れて来て
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
へさきに滝のような白波しらなみをたてて、グングン速力をまし、ランチとのあいだが、みるみる、せばまっていきます。
探偵少年 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つかはさるべきお約束やくそくとや、それまでのお留守居るすゐまた父樣とうさまをりふしのお出遊いでに、人任ひとまかせらずは御不自由ごふじいうすくなかるべく、何卒なにとぞ其處そこまはせて、白波しらなみ浦風うらかぜおもしろく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
與曾平よそべいは、三十年餘みそとせあまりも律儀りちぎつかへて、飼殺かひごろしのやうにしてもの氣質きだてれたり、いま道中だうちうに、雲助くもすけ白波しらなみおそれなんど、あるべくもおもはれねば、ちからはなくてもしうはあらず
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白波しらなみの、潮騷しほざゐのおきつ貝なす
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
磯に流るゝ白波しらなみ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
眺め入る河面かわもは闇を零細れいさい白波しらなみ——河神の白歯の懐しさをかつちりかの女がをとめの胸に受け留める。をとめは河神に身を裂かれいのだ。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
この路をあとへ取って返して、今へびったという、その二階屋にかいやかどを曲ると、左の方にの高い麦畠むぎばたけが、なぞえに低くなって、一面にさっと拡がる、浅緑あさみどりうつくし白波しらなみうっすりとなびなぎさのあたり
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白波しらなみさかまく海の中へ、とびこんだのです。
海底の魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
白波しらなみの、潮騒しほざゐのおきつ貝なす
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
白波しらなみの上なれば
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
二人は此処ここでもあとになり先になり、脚絆きゃはんの足を入れ違いに、かしらを組んで白波しらなみかつぐばかり浪打際なみうちぎわ歩行あるいたが、やがてその大きい方は、五、六尺なぎさはなれて、日影の如く散乱ちりみだれた、かじめの中へ
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山川の白波しらなみ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)