よみが)” の例文
信長はかならず乱脈と暗黒に沈んでいる日本全土の人々をよみがえらせてみせる。大君おおきみの御こころを安んじ奉る日を迎え取ってみせる。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人よりに非ず、人にるに非ず、イエス・キリスト及びこれを死人の中よりよみがえらせ給いし父なる神に由りて使徒となれるパウロ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
その後、おきぬの耳にそのときの嘉吉の声音が、ふとよみがえることがあった。おきぬは嘉吉を気の毒に思わずにいられなかった。
早春 (新字新仮名) / 小山清(著)
それらの魂が私の心の中によみがえってくる。私が自分の魂の窓を開いて、その奥の眼に見えない心の世界を見つむる時、大きい歓喜を私は感ずる。
蠱惑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
池藤八郎兵衛という名が、ああ、あの神童の小次郎か、と人々の記憶によみがえってきたのは、三年まえそのうめとの婚礼が行われてからのことだった。
松風の門 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ありし日がそのままよみがえってくるような筆の跡を、何度も何度も読み返しては、少将も康頼も涙を拭うのであった。
少年時代にったきりであるから、わたしはもうその人の顔かたちを見忘れていたが、父からその名を教えられて、古い記憶が今更のようによみがえって来た。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ルックザックの底に残っていたわずかな菓子などを片附けて落着くと、山の歌がくちずさまれる。そしてこの登攀とうはんの喜びや、心に生々とよみがえる岩の回想を語り合う。
一ノ倉沢正面の登攀 (新字新仮名) / 小川登喜男(著)
私は、今日耳にしたのだが、その時、錦子を絶息からよみがえらせて、四、五日保たせたのは、錦子の許婚いいなずけの人で、それから、その医師は、はやったということだ。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
勝平の言葉を聴くと、今迄いままで捗々はかばかしい返事もしなかった瑠璃子は、よみがえったように、快活な調子で云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
だが、電車を降りて彼の家の方へその露次を這入はいって行くと、疲労感とともに吻と何かよみがえる別のものがある。それが何であるかは彼には分りすぎるぐらい分っていた。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
宇宙の生命とつながって脈動しているような人、その人に抱かれる時私の疲れて崩れかけて居る魂が生き生きとよみがえるような霊智の人、肉体の人、その人が私は欲しいのだ。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
こうしたかれは何よりその広告画の表面の色彩と肌地のいろが、かれの今まで眺めては消えてゆく女の、いろいろな特長をかれの眼底にすこしずつよみがえらしてくるのである。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
立ち枯れの秋草が気紛きまぐれの時節を誤って、暖たかき陽炎かげろうのちらつくなかによみがえるのはなさけない。甦ったものを打ち殺すのは詩人の風流に反する。追いつかれればいたわらねば済まぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その翌日——雨月うげつの夜の後の日は、久しぶりに晴やかな天気であつた。天と地とが今朝よみがへつたやうであつた。森羅万象は、永い雨の間に、何時しかもう深い秋にもかはつて居た。
自然はいつもよみがえる力を固く支えている。今は国と国とが隔てられ、人と人とが背いている。しかし異邦の人と互に心を打ち明け得たら、どんなにか人類は厚い幸福に浸るであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その小次郎のことが、今の娘の言葉から、早瀬の記憶によみがえったからであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ああ 少年の日の悲歌エレヂーよみがへる
帰村 (新字旧仮名) / 森川義信(著)
神の光によみがへらむ。否
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
田楽村の野性な一少女頃の潜在を、道誉の野獣の爪にかきむしられて、はしなくも、その本質が彼女の血によみがえっていたのかもわからない。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤犬は、いや、あいつは私が見覚えのある眼色でっと私を見つめた。私は子供のとき教室でこの眼を見たときの感情が、自分のうちによみがえるのを感じた。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
そう云った刹那だった、彼の耳に、「二人の仕合せを祈るぞ」という、宗之助の別れの言葉がよみがえってきた。
彩虹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その強い光りにひとみを射られて、小坂部は彼に対する一種の恐怖と尊敬の念がまたよみがえって来た。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自然はいつもよみがえる力を固く支えている。今は国と国とが隔てられ、人と人とが背いている。しかし異邦の人と互に心を打ち明け得たら、どんなにか人類は厚い幸福に浸るであろう。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「あゝお帰りになった!」瑠璃子はよみがえったように、思わず歓喜に近い声を挙げた。その声には、夫に対する妻としての信頼と愛とがこもっていることを否定することが出来なかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その生々しい光景はまだ、昨日のできごとの様に、まざまざと心によみがえってくる。
そして風物は悠々ゆうゆうとして、あなたの御健康をよみがえらせていることとぞんじます。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
道人の診察狂いはない、浜路間もなくよみがえった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(これほどまでに、自己の生活の非を悔いて、真実の生命によみがえろうとしている者を、どうして、すげなく振り捨てられよう)
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう云った良人の言葉がはっきりあたまによみがえってきた。そうだ、情におぼれるときではない、祖父と孫、舅と嫁のつながりも大切であるが、今は戦いの時である。
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
嵐が鎮まって後、人を馬鹿にしたような月が冴えだした頃、やや流れもゆるんだ波うち際に、若い女たちの声が、よみがえった歓びにはしゃいでいた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よみがえったように立った。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こうして繧繝縁うんげんべりのうえに坐っていても、野に帰れば、たちまち牙をぎ爪をみがく性質のよみがえってくる者なのです。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市民はよみがえった。——そしてこの年暮くれを平和のうちに送ったのも、信長の徳とし、この正月、婦人が夜道を歩かれるのも、織田軍のお蔭と随喜していた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
打ってくれい。その竹杖で打たれたら、過去の苦行がよみがえってこよう。皮肉の破れるまで打て、わしを師と思わず打て、仏陀のお怒りをその杖にこめて——
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔を上げて、すでにここをおうと思い極めた時の決心を、今、磐石ばんじゃくのように自身の胸によみがえらせて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そなたが、そうして見せると、一そう伊吹の頃の小娘がこの眼によみがえされてくる。おれを嫌って、そなた、伊吹ノ城からはだしで田楽村へ泣いて帰ったことなどあったな」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
救いがたい人間性と申すべきか、平和の退屈さから、百八の魔星をよみがえらせて、ふたたび際限ない乱麻らんまの地上を眼に見たくでもなったものやらと思われますわい。……ああ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
末法魔界の仏灯に代って、昭々と、世を照らす燈明に、そち達の血はよみがえって燃ゆるであろう
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むむ、あすは存分、朝寝をしようよ。眼がさめて、よみがえッた青田を見るのを愉しみに」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところで主人筑前守がお心では、わずか二人の者の生命だにお差出しあれば、全城の生命はよみがえる。あなたの御名誉をも十分に考慮しようと、しきりに安土ともお打ち合せにござりますが
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よみがえらせてみたいという望みも寄せた。
宮本武蔵:01 序、はしがき (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四家老のおもてには、生色がよみがえった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
農民の疲弊ひへいよみがえってきた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)