甘藷さつまいも)” の例文
甘藷さつまいもやすいからとか、七面鳥の肉は高価たかいからとかいふ、その値段の観念にわづらはされないで、味自身を味はひ度いといふのだ。
小さな梨、粒林檎つぶりんごくりは生のまま……うでたのは、甘藷さつまいもとともに店が違う。……奥州辺とは事かわって、加越かえつのあの辺に朱実あけびはほとんどない。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ甘藷さつまいもほかには到底たうていさういふすべてのなへ仕立したてることが出來できないので、また立派りつぱなへひにだけ餘裕よゆうもないので
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
瓜のつるは朝々伸びて、とめてもとめてもしんをとめ切れぬ。二三日打っちゃって置くと、甘藷さつまいもの蔓は八重がらみになる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それにもかかわらず、二人は今、炉にかけた鍋の中から、熟した甘藷さつまいもを箸でさして突き出して、盆の上に置き並べ
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
甘藷さつまいも (白種) 六四・二四 一・四八 一・〇八 三一・八二 〇・九七 〇・六三
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
浦和の停車場からすぐに町はずれへ出て甘藷さつまいもや里芋やいろいろの畑の中をぶらぶら歩いた。とある雑木林の出っ鼻の落ち葉の上に風呂敷ふろしきをしいてすわり込んで向かいの丘を写し始めた。
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鴎外は甘藷さつまいもたけのこが好物だったそうだ。肉食家というよりは菜食党だった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
らあうち甘藷さつまくつたなんてゆはねえんだ」甘藷さつまいもつてづ/\いつた。かれたゞうれしかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
或は車なんどを曳いてあまねく府下を横行なし、所々にて救助を得たる所の米麦又は甘藷さつまいもたぐひくだんの車に積み、もて帰りて便宜の明地あきちに大釜を据ゑ白粥を焚きなどするを
「坊ちやま、これあ蕺菜ぢやござりましねえ、坊ちやまの食べさつしやる甘藷さつまいもでがさ。」
大麦は苅られ、小麦は少し色づき、馬鈴薯や甘藷さつまいも草箒くさほうきなどが黒い土をいろどって居る。其間をふといはりがねを背負って二本ずつ並んで西から北東へ無作法ぶさほうに走って居るのが、東京電燈の電柱である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いぢんぢやねえ」勘次かんじたゞおそろしいをしてしかるやうにおさへる。勘次かんじはまだはだしろかつ薄赤味うすあかみびた人形にんぎやう手足てあしのやうな甘藷さつまいもめしむことがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
雪で、今日は新聞がぬ。朝は乳屋ちちや、午後は七十近い郵便ゆうびん配達はいたつじいさんが来たばかり。明日あす餅搗もちつきを頼んだので、隣の主人あるじ糯米もちごめを取りに来た。其ついでに、かし立ての甘藷さつまいもを二本鶴子にれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)