爲樣しやう)” の例文
新字:為様
『暑いでせう外は。先刻さつきから眠くなつて/\爲樣しやうのないところだつたの。』と富江は椅子をすゝめる。年下の弟でもあしらふ樣な素振りだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
爲樣しやうのねえ坊ッちやまだ。男の癖に女中の部屋などに來るものぢやねえよ。早くあッちへ行つて寐ねえと、そら酷いから。』
反古 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
中根なかねだな、相變あひかはらず爲樣しやうのないやつだ‥‥」と、わたし銃身じうしんげられたひだりほほおさへながら、忌々いまいましさに舌打したうちした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
藤本ふぢもと來年らいねん學校がくかう卒業そつげうしてからくのだといたが、うして其樣そんなはやつたらう、爲樣しやうのない野郎やらうだと舌打したうちしながら
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
水のあわと成ましたと語るに一座の者共夫はどう詮議せんぎ爲樣しやうは無事哉と云ば九助はイヱ夫に就て御話が御座ります天道てんだうと云者はあらそはれぬもので正直しやうぢきかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それはみませんでしたのね。わたしはまた此樣こんな天氣で氣が欝々うつ/\して爲樣しやうが無かツたもんですから、それで。」と何か氣怯きおそれのするてい悸々おど/\しながらいふ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わからんね。要するにお前の顏はあかい、俺の顏は青い。それだからうにも爲樣しやうのないことになつてゐる。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
主個の老人らうじん押禁おしとゞめ彌生と言ど未だ寒きに冷酒れいしゆ身體からだどくなればツイあたゝめて差上んと娘に吩咐いひつけ温めさせ料理は御持參ごぢさんなされたれば此方で馳走ちそう爲樣しやうもなし責て新漬しんづけ香物かうのものなりともと言へば娘は心得こゝろえて出して與ふる饗應振もてなしぶり此方は主個に酒盞さかづき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
爲樣しやうがあらうが有るまいが、それはわたしの知ツたことぢやない! といふやうな顏をして、近子ちかこはぷうとふくれてゐた。そしてやが所天をつとそばを離れて、椽側えんがは彼方あつち此方こつちと歩き始めた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
自分は急に悲しくなツて、「僕、家へ歸りたくツて爲樣しやうが無いんです。」
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)