熟睡うまい)” の例文
昨夜ゆうべいといくさのことに胸なやませていたていじゃに、さてもここぞまだ児女わらわじゃ。今はかほどまでに熟睡うまいして、さばれ、いざ呼び起そう」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
いわば、長夜の臥床ふしどからさめようとする直前、一段深く熟睡うまいに落ち込む瞬間がある。そうした払暁あさのひとときだった。
蛙をたべて、蛙の唄をききながら熟睡うまいにおちる宵が、蚊帳のなかに夜ごと健康をはこんでくるのを、わたしは夢まくらで識つてゐた。とりわけ打算的な睡り。
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
はげしきいかづちはわがかうべのうちなる熟睡うまいを破れり、我は力によりておこされし人の如く我にかへり 一—三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
貴殿が輿こしで行かれるなら我らも輿で追っかけ申す——またもし旅宿へ泊まられるなら同じ旅宿へ我らも泊まり、貴殿に熟睡うまいはさせますまい——こうと決心したからには
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
熟睡うまいの窓につかの 罪逃がれにし人の子を 虚無の夢路にさゝやきて きよき記憶を呼びさませ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その薬法はかねて記して置いたが、それよりも、眠り薬を巧みに用いれば、宿直とのいの者も熟睡うまいして、その前を大手を振って通っても見出されぬ。つまり姿を消したも同然じゃ。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
年久くかはるる老猫ろうみようおよ子狗こいぬほどなるが、棄てたる雪のかたまりのやうに長火鉢ながひばち猫板ねこいたの上にうづくまりて、前足の隻落かたしおとして爪頭つまさきの灰にうづもるるをも知らず、いびきをさへきて熟睡うまいしたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そこでは、煙管を銜へて坐つてゐる見張番の他は、皆ぐつすりと郎党たちが熟睡うまいしてゐた。
ぐさ小屋ごやの中の高いびきは、さだめし心地ここちよい熟睡うまいにおちているだろう。お長屋ながやもみんなえて、卜斎ぼくさいの家のなかも、あるじのこえなく、きゃくわらいもたえて、シンとしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うちの様子をうかがふに、ただ暗うしてしかとは知れねど、奥まりたるかたよりいびきの声高くれて、地軸の鳴るかと疑はる。「さてはかれなほ熟睡うまいしてをり、このひまおどり入らば、たやすく打ち取りてん」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
おとしづまりて、日にけて、熟睡うまいとこに伏す如く
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
熟睡うまいとこに埋もれて、子供は眠る
熟睡うまい』をなか
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
稚児はすでに熟睡うまいして、イワンも微睡まどろみはじめたり。
音しづまりて、日にけて、熟睡うまいの床に伏す如く
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
高齢九十の老母は何も知らず熟睡うまいしていた。
御用の声が間もなく近隣の熟睡うまいを破った。
ほのほのころも、まとひたるつち熟睡うまい静心しづごころ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
疲れきって、こんこんと深い熟睡うまいに。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ほのほのころもまとひたるつち熟睡うまい靜心しづごゝろ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
朝明あさけより夕をかけて熟睡うまいする
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
朝明あさけより夕をかけて熟睡うまいする
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)