濁水だくすゐ)” の例文
ぶりき板の破片や腐つた屋根板でいたあばらは数町に渡つて、左右さいうから濁水だくすゐさしはさんで互にその傾いたひさしを向ひ合せてゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
〔譯〕濁水だくすゐも亦水なり、一ちようすれば則ち清水せいすゐとなる。客氣きやくきも亦氣なり、一てんすれば則ち正氣せいきとなる。きやくふの工夫は、只是れ己に克つなり、只是れ禮にかへるなり。
此藥このくすりをのませ給はば、疑なかるべきなりやみなれども、りぬればあきらかなり。濁水だくすゐにもつきりぬればすめり。あきらかなること日月じつげつにすぎんや。きよこと蓮華れんげにまさるべきや。法華經は日月じつげつ蓮華れんげなり。
こゝろもとなげなくも簇々むら/\みなみからはしつて、そのたびごと驟雨しううをざあとなゝめそゝぐ。あめはたかわいたつちにまぶれて、やが飛沫しぶき作物さくもつ下葉したばつて、さら濁水だくすゐしろあわせつゝひくきをもとめてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
信水しんすゐ犀川さいかは濁水だくすゐあるゆゑ也。さけ初秋より海をいでて此ながれさかのぼる。蒲原郡の流は底深そこふかかはひろきゆゑ大あみを用ひてさける。かの川口えきよりかみ上田妻有うへだつまりのあたりにては打切うちきりといふ事をなして鮏をる。