潰滅かいめつ)” の例文
それもそのはず、これは父信玄を傷つけられ、自分の隊もひとたびは潰滅かいめつひんした太郎義信が新手を得て再編制して来た一隊である。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長楽路の蛇酒屋から掠奪りゃくだつした蛇酒に昂奮した赤い布の一連も、中央司令部の銭大鈞せんたいきんの軍隊が出動して忽ち潰滅かいめつされてしまった。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
まったく潰滅かいめつした「サークル」の模様や、転向していった連中のことを口数少く語って、あとは黙ってしまう。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
加波山の貯蔵所の潰滅かいめつしたことはむろんわかっているだろうし、かれらのほうでは渡辺が、死躰の出ない以上、連絡のあるのを待っているに違いない、だから
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼の奇妙な性格も、異常な動作も、そして彼にとって唯一の世界である海軍が、沖縄の戦終り、既に潰滅かいめつしたことによるいらいらした心情も、おそらくは皆そこにあるのだ。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
これほど子供のうちより心の繋りを持つ富士が、自分が死んで、やみやみ後に安泰で残る筈がない。自分が死ぬときは、あの巨大な土塊も潰滅かいめつの時だ。強くそう思えて来た。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あのはてしない戦線せんせんで、あるときは、にごったおおきなかわわたり、あるときは、けわしい岩山いわやまをふみこえて、頑強がんきょうにていこうする敵兵てきへいと、すさまじい砲火ほうかをまじえ、これを潰滅かいめつ
しらかばの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二十三、四の青年で、見るから病弱そうなのが毎日この碁会所へきていたが、田町たまち辺の工場の事務員で、ひどい反戦思想をもち、徹底的に軍の潰滅かいめつと敗北を信じ、共産主義を愛していた。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「いよいよおもしろい」と町長はいすを乗りだして、「これを機会に根底から立憲党を潰滅かいめつするんだね、そうだ、じつに好機会だ、わざわいが転じて福となるぜ、おい、早く退院してくれ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ね飛ばされたと言おうか、蹴散らされたと言おうか、蹂躙じゅうりんとも、潰滅かいめつとも、何とも言おうようなき大破壊に逢着してしまったというのは、後ろの美しさに引きかえて、何というこれは醜悪
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
他は容易に潰滅かいめつするであろう、云々うんぬん
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
佐々成政は、その日、もう敵の末森城は、潰滅かいめつは寸前のものという見通しで、坪井山つぼいやまからずっと本陣をすすめ、すぐ城下近くまで来て
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、その反面では、一族の潰滅かいめつに備えて、或る種の謀計が、めぐらされていたというのである。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これは田楽狭間を潰滅かいめつさせると直ぐ、大高方面へ偵察に向けられた隊である。大高には、三河の松平元康が、義元の先鋒せんぽうとして働いていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼ひとりのため、右翼は潰滅かいめつされ、余波はもう中軍にまで及んできた。丞相旗をめぐる諸軍すべて翩翻へんぽんとただおののき恐れて見えたが、その時
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
董禧、薛則の二将が討たれたりと聞えれば、敵勢の陣はまさに潰滅かいめつ状態であろう。その虚をのがすべきでない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上、蜀の張翼、王平の二手がうしろへまわって出たため、三万の兵ことごとく潰滅かいめつし去るかと危ぶまれた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが——一党四十幾名の生命をになって、薄氷うすらいを踏んでいるのだ。亀裂ひびを見たら、もう全部の潰滅かいめつである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂布の前衛は、木の葉の如く蹴ちらされ、怒濤の如く一隊は小沛しょうはいに侵入し、そのほか、各処の先鋒戦で、徐州兵はことごとく潰滅かいめつされ、刻々、敗兵が城下に満ちた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「丞相。それがしに、五千騎おかし下さい。こんなことをしている間に、長安を潰滅かいめつしてみせます」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
羽、飛両雄の馬蹄の下に、死骸となる者、逃げ争う者、笑止なばかりもろい潰滅かいめつを遂げてしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四国、紀州の根来ねごろ雑賀さいが党などの危険分子にまず潰滅かいめつを与えておくために。さらに手近な、美濃や尾張の信雄恩顧おんこの諸将にたいし、利をもってそれを切り崩すために。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雑賀党は、一瞬のまに、根来の潰滅かいめつを見せられ、また秀吉軍の疾風迅雷しっぷうじんらいの勢いに驚き怖れて、戦わずして、雑賀孫一さいがまごいち以下の重なる徒党は、みな降人こうにんに出て、秀吉に伏した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
潰滅かいめつちょうが見えてきた。その方面の敵は、不肖ふしょう池田勝三郎が当って蹴ちらしてみせる」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「早速に兵を率い、瓦口関正面に攻めかかれ、われは、あの百姓を案内とし、精兵五百あまりをひきつれ、小路を走って敵が背後に廻り、一気に張郃の軍の残余を潰滅かいめつせしめよう」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝家は身をもってのがれたが、勝家の羽翼うよくであった全軍は、完全に潰滅かいめつ霧散むさんし去った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここは、孤立するおそれがある。味方の山之手隊は、潰滅かいめつされたという。並河掃部なみかわかもんどのも討たれた。諏訪すわ飛騨守も討死した。——つつまれぬうちにはや引き退こう。退けや、退けや」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
好まない戦だが、応戦しなければ潰滅かいめつするし、応戦していれば果てしがない。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
情熱的な加担かたんを示して、北陸一帯の反秀吉気勢を一手にひきうけていた佐々成政の潰滅かいめつをも、じっと坐視しているに至っては、血の気の多い三河武士が、黙っていられないのも無理はない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南都、叡山、その他の諸宗諸国の反念仏派は、この時と、なお輿論よろんをあげた。そして功を奏した。徹底的に、念仏は地上から一掃され、彼らのいうところの法敵吉水は、潰滅かいめつを予想された。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これからの大事は、第一に新しい軍備の充実。それに従って、戦法の改革。なお刻々、時代に遅れない心がけが肝要だ。——一武田ごときを潰滅かいめつさせたからといって、思い上がってはいけない」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひとまず退けい。道をあらためて、こんどこそは潰滅かいめつしてやる!」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大久保隊はたちまちのうちに、惨たる潰滅かいめつをうけてしまった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郭汜の手勢を潰滅かいめつしてしまうと楊奉はまた、その余勢で
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一城一城、連環れんかんの小城は、かくて箇々に潰滅かいめつされた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後深草の望みを潰滅かいめつさせた御心理も解らなくはない。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)