溶解ようかい)” の例文
かれ眼前がんぜんこほりぢては毎日まいにちあたゝかひかり溶解ようかいされるのをた。かれにはそれがたゞさういふ現象げんしやうとしてのみうつつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うすくれないというよりは、そのうすくれない色が、いっそうこまかに溶解ようかいして、ただうすら赤いにおいといったようなあわあわしい花である。主人は、花に見とれてうつつなくながめいっている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かへりがけに玄關げんくわんわき藥局やくきよくで、粉藥こぐすりまゝ含嗽劑がんそうざい受取うけとつて、それを百ばい微温湯びをんたう溶解ようかいして、一にち數回すうくわい使用しようすべき注意ちゆういけたとき宗助そうすけ會計くわいけい請求せいきうした治療代ちれうだい案外あんぐわいれんなのをよろこんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たとえば、溶解ようかいせるなまりくちるるとも、すこしも不思議ふしぎにはおもわぬであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かくれたる物の芽にみたる無数の宝玉の溶解ようかい
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すべての植物しよくぶつつて緑素りよくそ悉皆みんなそらつてるのだ。はるになるとそらはそれをあめ溶解ようかいしていてやるのだ。それだからうるほうたえだはどれでもあをいろどられねばならぬはずである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たとへば、溶解ようかいせるなまりくちるゝとも、すこしも不思議ふしぎにはおもはぬであらう。が、これところおいては如何どうであらうか、公衆こうしゆうと、新聞紙しんぶんしとはかならかくごと監獄バステリヤは、とうに寸斷すんだんにしてしまつたであらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)