渋々しぶしぶ)” の例文
旧字:澁々
先生方がお役目半分に、渋々しぶしぶ聞きに来ている態度はまあいいとして、その大部分が本当に気乗りがしていないばかりじゃない。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ソレも宜いとしておいて、この攘夷はドウだ。自分がその局にあたって居るからよんどころなく渋々しぶしぶ開国論を唱えて居ながら、その実をたたいて見ると攘夷論の張本だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
介三郎にいわれて、渋々しぶしぶ、手を出してつぎあったが、それでもなお釈然たる空気には溶けあわなかった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝子はこの狂人のような男と別れて、早く停車場へ入りたい気がしたが、なんだか大変な話と云うのが気にも懸るので、渋々しぶしぶ彼とならんで公園の方へ歩いて行った。
凍るアラベスク (新字新仮名) / 妹尾アキ夫(著)
「好いていやしないよ」と彼は妙にしょげて渋々しぶしぶ呟いた。「母ちゃんは血が出たら……いつもきざみ煙草を傷にはっていたんだもの、僕ちゃんと知っていたんだもの」
光の中に (新字新仮名) / 金史良(著)
渋々しぶしぶ履物はきものを突っかけて玄関を出た。見ると、屋敷の者が四、五人、手に手に提灯ちょうちんを持って、ポカンと口を開け、ひどく感心したように玄関の戸の表側おもてがわを見上げている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これが他の門番はもちろんのこと、その他の間にも評判となって、さすがの彼も兜をぬいで渋々しぶしぶ三十銭を払い、『あとはもう要らないよ』と悲鳴をあげたことであった。
というおおせだ。宗三はよっぽど返事をしないでいようかと思ったが、まさかそうもならず、渋々しぶしぶ席を立って、課長の机の前まで行った。もっとも「何か御用で」なんて追従ついしょうは云わない。
接吻 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
学士はそこで渋々しぶしぶとポケットから鍵を出すと戸口の鍵孔かぎあなに入れ、ガチャリと廻して扉を開いた。そこには思いがけなくもピンク色のワン・ピースを着た背の高い若い婦人が立っていた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところで、立会の警官は少年に対して落とし主から拾い主が謝礼を貰うのは、国の定めとなっているから受け取らねばいかん、というので少年は渋々しぶしぶ謝金を受け取ったような次第であった。
淡紫裳 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
気を付けて持って行くようになどと恩に着せまたは渋々しぶしぶと、竜宮の主がくれたというものの中には、珍らしい名の宝物宝器も無論あるが、それよりもずっと多いのは小犬・黒猫・石亀の類
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
下剃したぞり一人ひとりをおいてられたのでは、家業かぎょうさわるとおもったのであろう。一張羅ちょうら羽織はおりを、渋々しぶしぶ箪笥たんすからしてたおはなは、亭主ていしゅ伝吉でんきちそでをおさえて、無理むりにも引止ひきとめようとかおのぞんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「あれが欲しい」といいましたが、「あんな物をどうするの。もう起きなさい」と、誰もかまってくれません。やがて御飯になりました。渋々しぶしぶ起きておぜんに向っても、目は軒端のきばを離れません。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
橋田氏は、そのひとらしくも無く、なぜだか、ひどく渋々しぶしぶ応じた。
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
紳士は、渋々しぶしぶ、又椅子に座って
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
清原 (渋々しぶしぶと彼の隣に坐る)
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
ただその徳川が開国であると云うのは、外国交際のしょうあたって居るから余儀なく渋々しぶしぶ開国論にしたがって居たけの話で、一幕まくっ正味しょうみ楽屋がくやを見たらば大変な攘夷藩だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と、口にはださないが、はらのなかでは、渋々しぶしぶした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また渋々しぶしぶこの棚の製作を継続しやがった。
失敗園 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、渋々しぶしぶ、聞き書きをしたためだした。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、渋々しぶしぶ、迎えのかごに乗りました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)