洪水おほみづ)” の例文
何でも上州辺のある沼に鯰をうんと飼つてゐた、それが洪水おほみづに押し流されて、河にち込んだのが、流れ流れて両国川に入つて来たのだといふ事だ。
無垢むく若者わかものまへ洪水おほみづのやうにひらけるなかは、どんなにあまおほくの誘惑いうわくや、うつくしい蠱惑こわくちてせることだらう! れるな、にごるな、まよふなと
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
しかるに昔、雨降の後に洪水おほみづが出た時、村の東境まで西へ向つて流れて来た酢川が、北へ折れる処で北へ折れずにそこを突破したから、村の西方を北へ流れてゐる淡水の川に
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
二人は遠眼にそれを見ていよ/\焦躁あせり渡らうとするを、長者はしづかに制しながら、洪水おほみづの時にても根こぎになつたるらしき棕櫚の樹の一尋余りなを架渡して橋として与つたに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たきれましたとまをしまして丁度ちやうどいまから十三ねんまへ可恐おそろしい洪水おほみづがございました、恁麼こんなたかいところまでかはそこになりましてね、ふもとむらやまいへのこらずながれてしまひました。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だが又セエヌ河へ出て見ると、一週間まへから洪水おほみづ通船つうせんとまつた騒ぎであるにかゝはらず、水にひたつた繋船河岸かし其処彼処そこかしこで黒い山高帽のむれが朝早くから長い竿を取つて釣をして居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
庄吉は土手を切つた洪水おほみづのやうに、留めどもなくしやべりまくるのです。
長江の流もかくやたうたうと刷りいづる紙幣さつさや洪水おほみづ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
洪水おほみづの如く跳らせ
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
洪水おほみづの溢るゝごとく
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
光は高き洪水おほみづ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
郊外生活もいが、今年のやうに洪水おほみづが出て、郊外電車が幾度となく不通となる様では実際郊外生活も厭になる。
洪水おほみづの如くをどらせ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「私の父はミスシツピイで農園をやつてゐましたが、ある時洪水おほみづで農園はすつかり台なしにされてしまひ、加之おまけに私達の住家すみかも根こそぎ持つてかれました。」
この秋の大阪府の洪水おほみづも、色々の事を吾々に教へてくれた。平常ふだんつたかぶりをしてゐる土木の技師が実は何にも知つてゐない事を教へて呉れたのも洪水の力だ。