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檜葉
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ひば
ふりがな文庫
“
檜葉
(
ひば
)” の例文
八坪程しかない庭の片隅に小さい
檜葉
(
ひば
)
に交つた一本の山茶花が、薄色に咲いていかにもはかなげな夕暗の寂しい気分を漂はせて居る。
公判
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
それに衣川の袖に
檜葉
(
ひば
)
の枯葉が
附着
(
つ
)
いていましたし、それからお宅の隣りの、屋根に接近した裏庭の檜葉の枝が折れていました。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
四つ目垣の内に、
高野槙
(
こうやまき
)
が一本とちゃぼ
檜葉
(
ひば
)
が二三本と植えてあって、植木の間から、竹格子を打った
肘懸窓
(
ひじかけまど
)
が見えている。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
深い谷間には
檜葉
(
ひば
)
の木が沢山生えて居りますが
杜鵑
(
ほととぎす
)
は月の出たのを悦びてか
幽邃
(
ゆうすい
)
なる谷の間より美しい声を放って居ります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
散らばつた新築の借家が、板目に残りの日をうけて赤々と
映
(
は
)
えてゐる。それを取り囲んで方々の
生垣
(
いけがき
)
の
檜葉
(
ひば
)
が、地味な浅緑で
凝
(
じ
)
つと
塊
(
かたま
)
つてゐる。
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
▼ もっと見る
わざとらしく曲りくねった松を
栽
(
う
)
えたり、
檜葉
(
ひば
)
をまん丸く刈り込んだりしてあるのは、
折角
(
せっかく
)
ながらかえって面白くない。
薬前薬後
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
檜葉
(
ひば
)
の枝と松の枝との間に竹竿をわたして、あなたの毛布が空気を吸っている彼方には安積山の山並がございます。
獄中への手紙:12 一九四五年(昭和二十年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
庭の
檜葉
(
ひば
)
の手入れをしていた植木屋たちはしかし平気で何事も起こっていないような顔をして仕事を続けていた。
小爆発二件
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その
檜葉
(
ひば
)
の立木に包まれた薄鼠塗りの洋館の建物の二階が横向きに見えるのを見上げながら義男は「何も要らないからせめて理想の家だけは建てたい。」
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
何処
(
どこ
)
の
珈琲店
(
カフェー
)
にもある
焦茶
(
こげちゃ
)
の薄絹を張った、細い
煤竹
(
すすだけ
)
の骨の、
帳
(
とばり
)
と
対立
(
ついたて
)
とを折衷したものが、外の出入りの目かくしになって、四鉢ばかりの
檜葉
(
ひば
)
や
槙
(
まき
)
の鉢植えが
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
すぐ前に大きい
檜葉
(
ひば
)
があって、その向うの右手の隅に
八手
(
やつで
)
があった。その葉には雨の露がまだ一杯たまっていた。でも空は綺麗に晴れて星がきらきらと輝いていた。
球突場の一隅
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
……さて家の裏はくぬぎと杉の林、東は深い藪で、西側に屋根付きの井戸がある。そこから三四間おいて
檜葉
(
ひば
)
の生垣を境に、三浦十兵衛という隣り屋敷と続いている。
風流化物屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
丈の一二寸ほどの、
檜葉
(
ひば
)
のような葉をした木に、薄黄な花が、蕾は大きな雫のような、開いたのは桜のような形をした花が、一面に群らがって、そして露に濡れそぼっている。
烏帽子岳の頂上
(新字新仮名)
/
窪田空穂
(著)
檜葉
(
ひば
)
の垣根に添って這入って行くと、家の中が森としているのが啓吉によく判った。啓吉は裏口へ回って見た。雨戸が閉ざされている。節穴から覗いてみたが、中は真暗だった。
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
○ある人のいふ所に依ると九段の靖国神社の庭園は社殿に向つて右の方が西洋風を摸したので
檜葉
(
ひば
)
の木があるいは丸くあるいは
鋒
(
ほこ
)
なりに摘み入れて下は綺麗な芝生になつて居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
庭は
一隅
(
ひとすみ
)
の
梧桐
(
あおぎり
)
の繁みから次第に暮れて来て、ひょろ
松
(
まつ
)
檜葉
(
ひば
)
などに
滴
(
したた
)
る
水珠
(
みずたま
)
は夕立の後かと
見紛
(
みまご
)
うばかりで、その
濡色
(
ぬれいろ
)
に夕月の光の薄く映ずるのは何とも
云
(
い
)
えぬすがすがしさを
添
(
そ
)
えている。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は散歩の途中、偶然この家の前を通りかかって、軒さきに「貸間あり」の札がさがっているのを見かけ、
檜葉
(
ひば
)
の
生垣
(
いけがき
)
にかこわれているこの家のたたずまいになんとなく気を
惹
(
ひ
)
かれたのである。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
檜葉
(
ひば
)
、
樅
(
もみ
)
などの古葉貧しげなるを望むべき窓の外に、庭ともあらず打荒れたる広場は、唯
麗
(
うららか
)
なる日影のみぞ
饒
(
ゆたか
)
に
置余
(
おきあま
)
して、そこらの梅の
点々
(
ぼちぼち
)
と咲初めたるも、
自
(
おのづか
)
ら怠り勝に
風情
(
ふぜい
)
作らずと見ゆれど
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
雀が二羽
檜葉
(
ひば
)
を揺すって、転がるように青木の蔭へかくれた。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
山茶花のはつかにのこる
梢
(
うれ
)
のいろ
面
(
おもて
)
冷えながら
檜葉
(
ひば
)
と親しさ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
南天、
柘榴
(
ざくろ
)
、
檜葉
(
ひば
)
、松、
楓
(
かへで
)
の木が
樹木とその葉:11 夏の寂寥
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
ひろ子は二階の特高室の窓から雀の母親が警察の構内に生えている
檜葉
(
ひば
)
の梢に巣をかけているのを見つけた。
乳房
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
淋しい風が吹いて來て、一本
圖拔
(
づぬ
)
けて背の高い冠のやうな
檜葉
(
ひば
)
の
突先
(
とつさき
)
がひよろ/\と風に搖られた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
その
檜葉
(
ひば
)
とても高さ一丈五、六尺から二丈位の樹があるだけでその
外
(
ほか
)
には
灌木
(
かんぼく
)
しかございませぬ。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
今年は研究所で買ったばかりの双眼顕微鏡を
提
(
さ
)
げて来て少しばかり植物や昆虫の世界へ這入り込んで見物することにした。着くとすぐ手近なベランダの
檜葉
(
ひば
)
を摘んで二十倍で覗いてみた。
高原
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
檜葉
(
ひば
)
をまん丸く刈り込んだりしてあるのは、折角ながら却っておもしろくない。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
同じような小座敷の並んでいるいちばん奥で、縁側から三尺ほど隔てて
檜葉
(
ひば
)
の高い生垣があり、その向うは路次に沿って小さなしもたやになっているらしく、子供の駆けまわる声などがま近に聞えた。
扇野
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼らは
槇
(
まき
)
や
檜葉
(
ひば
)
類を少しずつ買った。それらを、西日のさす崖ぶちや、むき出しな格子の左右に植えた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この病室は内庭に向って窓があって青空の下に
檜葉
(
ひば
)
の梢と何かの葉のない枝が見えます。側台にバラが二輪とさち子さんのくれたシクラメンの鉢。ではこれでおやめ。どうか呉々お大切に。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その中を歩いたら髪に燦く液体がねばりつきもしそうな光波につつまれ、円い
躑躅
(
つつじ
)
や
檜葉
(
ひば
)
がくっきりと黒い影をしたがえて鎮まりかえっている。樹や芝生が夢幻的に、生あるもののように思えた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
檜
漢検準1級
部首:⽊
17画
葉
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
“檜葉”で始まる語句
檜葉垣